遊◎機械/全自動シアター

another day アナザデイ

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【スタッフ】
作:高泉淳子●演出:白井晃●
オリジナル音楽:中西俊博● 舞台美術:松井るみ●照明:吉澤耕一●衣裳:大友靖子●音響:藤井正昭● 小道具:ちばあけみ●舞台監督:堀内真人、野口毅● 演出助手:石丸さち子●舞台監督助手:埋橋真理、小林丈人、仁藤智浩、橋本加奈子● 照明操作:井口紀子●衣裳製作:佐藤奈巳、籠谷有紀子●衣裳助手:林明泉● 衣裳スタッフ:奈須久美子●大道具製作:C-COM舞台装置、オサフネ製作所、工房ゼペット● 小道具協力:高津映画装飾●映像機材協力:ZOOM● 宣伝写真:細川晃●宣伝美術:高橋雅之(タカハシデザイン室)●ヘアメイク:荻野明美● オブジェ:"BANANA"富田薫●パンフレットCGオペレーション:Studio Gumbo● 製作:馬場順子、根本成美、横山利華●制作協力:NEVULA PROJECT、ポスターハリスカンパニー● 協力:林オフィス、センターライン アソシエイツ、ぴあ● 広島公演主催:テレビ新広島●福岡公演主催:ピクニック/協力:日本エアシステム● 神戸公演主催:新神戸オリエンタル劇場●京都公演主催:京都府・(財)京都文化財団● 新潟公演主催:(財)新潟市芸術文化振興財団・NAMARA事務局● 名古屋公演主催:名古屋市民芸術祭実行委員会、名古屋市、名古屋市教育委員会、 (財)名古屋市文化振興事業団、遊◎機械/全自動シアター名古屋上演実行委員会● 仙台公演主催:仙台放送●亀有公演主催:(財)葛飾区文化振興財団● 企画制作:遊機械オフィス●

【日程】
東京:世田谷パブリックシアター 1999.9.6-9.19
広島:アステールプラザ大ホール 1999.9.24
福岡:メルパルクホール福岡 1999.9.26
神戸:新神戸オリエンタル劇場 1999.9.29-9.30
京都:京都府立府民ホールアルティ 1999.10.2
新潟:りゅーとぴあ劇場(新潟市民芸術文化会館) 1999.10.5
名古屋:名古屋市芸術創造センター 1999.10.7-10.9
仙台:仙台市太白区文化センター 楽楽楽ホール 1999.10.12
亀有:かめありリリオホール 1999.10.14-10.15

上演時間:2時間(休憩なし)、パンフ:1000円(B5サイズ)、台本:1000円(B5サイズ)

【キャスト】
カーディガンの女(少女):高泉淳子
寸足らずの背広の男(少年・キャメルの男):平沢智
息がつまった男:白井晃
家を飛び出した娘:滝山雪絵
ワーニャな親父:富岡弘
ワーニャな親父の女房:富浜薫
客の来ない店の主人:陰山泰
店の主人の息子:北村有起哉
店の従業員(ギャルソン・ウエイター・インタビュア):湯澤幸一郎


このお話のためのながいプロローグ
水の底に埋もれた記憶のガラクタのダンス
1.両親が消え、彼と別れ、そして少女は大人になった
2.つぶれかけたレストラン
3.賞味期限の切れた家族
4.砂漠のレストラン
5.レストラン強盗
6.ワーニャな親父とその女房
7.寸足らずの背広の男と色のついた女のドライブ
8.客の来ないドライブイン
9.寸足らずの背広の男のドライブイン略奪計画
10.ワーニャな親父の大騒動
11.ママと娘の別れ
12.もうひとつの生き方
13.寸足らずの背広の男の行く先
14.そこはレストラン
このお話のためのおまけのエピローグ

役名および場面名は『アナザデイ』台本(著者:高泉淳子、発行:遊機械オフィス)より引用させていただきました。
なお下記の感想に出てくる場面説明とセリフについては、ほとんどわたしの記憶と印象で書いてますが、いくつか台本を 参考にさせていただいたものもあります。




まずは舞台全般に関する感想です。(観劇:神戸(2日とも)・京都)

遊◎機械は初めて観たのですが、好きですね。ひとことで言うと「好き」これだけになってしまいます。 でもそれが一番大切かなぁと。
描かれている事柄はけして明るくうきうきしたものではない(どっちかというと暗い)んですけど、 じんわりと暖かくて、前向きな気分にさせてくれる舞台でした。切なくて、でも幸せな…。

まず平沢さんがこれほどまでに重要な役どころとは思っていなかったので…シアターガイドの白井さんと高泉さんの 対談でそこそこ予想していたつもりなんですが、初見の神戸初日では驚きました…。 それできちんと遊◎機械の世界にはまってて、決めるところでは「さすがはダンサー平沢智!」って思わせてくれるし、 ファンとしては至福のときを過ごさせていただきました。神戸2回と京都公演を観て、だいぶ冷静に観れるようになりましたが、初見のときは ただただぼーーっと幸せかみしめておりました。とくに席が最前列センター付近だったので、何度も何度も平沢さんが 舞台から落っこちてくるんじゃないかと、ドキドキしてしまいました。

NODA MAPもそうだなぁと思うのですが、お芝居でもこういう「動き」が要求される舞台には、平沢さんてぴったり くるんだなぁと思います。パンフに平沢さん自身がコメントしてらっしゃいますが、セリフが苦手なんですよね。(いや、 誤解のないように。歌が得意ってわけじゃないです(^^;)ミュージカルではいつも、くせのあるテンションの高い役が多いので、 普通の会話って少ないように思うのですが(あ、『忘れモノ・探しモノ』では普通の会話けっこうありました)、でも、 今回こういう普通の会話をいっぱいしていて、全然浮いてたり不自然だったりせず、はまっていたので、うれしかったです。
こういうミュージカルじゃないダンスのないお芝居に出演している平沢さんを観ていて、やっぱり好き…って思うのは、わたしは「ダンサー・平沢智」だけ じゃなく「役者・平沢智」が好きなんだなぁ…って再認識します。ひとが何と言おうとわたしは好きなんだから、それでいいの。。。 (って…別に誰も何も言ってませんが(^^;)
ところで、高泉さんてホントに素敵な女優さんですね。わたしすっかりファンかも。 平沢さんファンとしては、それはそれはうらやましいのですが(笑)>高泉さん。

舞台装置は一見シンプルで、後方、舞台いっぱいの高さを使ったスクリーンに映される映像が効果的に使われています。この映像、全部 撮影済みのものなのかと思ったら、舞台両端に可動式のカメラが設置されていて、リアルタイムの映像も重ねて使われているんです。 影絵も使われます。舞台上にたつ役者さんと、映像と、照明が渾然一体となって、それはそれは美しい世界を作り出しています。 恍惚としてしまいます。役者さんはみなさん個性があって、それぞれ役どころにもぴったりきていました。何回観ても面白いところは笑えます。 印象深いのが湯澤さん。クールな容姿もですが、声が気持ち良くて、歌も聴いてみたいなぁと思いました。出演者全員の写真とプロフィールは 遊◎機械/全自動シアターのHPにあります。LINKからどうぞ。



では平沢さんの見所などを。…ってほとんど全部なんですけど(笑)

【この先は、ストーリー展開や結末をはっきり書いてますので、これから観られるかたはご注意ください。】


このお話のためのながいプロローグ〜水の底に埋もれた記憶のガラクタのダンス

高泉さん演じる少女の独白で語られるプロローグでは平沢さんは「少年」です。可愛いです(^^)。 少女は事故で父親を失い、母親は少女を捨てて恋人と出ていってしまう。少年は、両親がいなくなって遠くに行くことになった少女を誘いふたりでボートで逃げようとする。 幼いながらも真剣な恋。が、彼の両親が連れ戻しにきてつかまってしまう。 きっと迎えにいくからと叫ぶ彼。でもいつまで待っても彼は迎えに来なかった。

1.両親が消え、彼と別れ、そして少女は大人になった

夢をあきらめて大人の女になったかつての少女(高泉さん)とその娘(滝山さん)のドライブ。女は小さい頃から外出のときにはカーディガンを手放せない。 もうすっかり古くなって毛玉だらけのカーディガン。自分の人生はこのカーディガンについた毛玉みたいなものだと女は思う。 ドライブの途中で見かけるキャメル(煙草)の広告の立て看板。らくだの前で煙草を吸っているキャメルの男。これが平沢さん。 ダークなスーツに身を包み、サングラスをかけて煙草を吸う。 かっこいいのですよ〜(*^^*)。らくだを見ると夢がかなうらしい…

2.つぶれかけたレストラン〜3.賞味期限の切れた家族〜4.砂漠のレストラン

女と娘、息がつまって家を出ていった夫(白井さん)とのひさしぶりの家族での食事。でもその場で娘が「結婚する」と言い出す。しかも相手は妻のいる、 父親よりも年上の役者だという。大騒ぎになり娘は飛び出してしまう。騒ぎのおり、ギャルソン(湯澤さん)が持ってきた料理が女の服を汚してしまう。代わりにこれをと 店の主人(陰山さん)が出してきたものは、派手なドレス。ドレスに着替えたがやはり女はカーディガンを手放せない。女の後ろにキャメルの男(平沢さん)が 現われ、「脱いじゃえよ」とささやく。このあと、幻想のエジプトの場面。砂漠のレストランとなる。 ここの、平沢さん、むちゃむちゃかっこいいです〜。言ってることとかはちょっと変ですけど(^^;。最後に女のカーディガンを 後ろから脱がすんですが〜あ〜ひゃ〜(*^^*)って感じ(意味不明ですね、ごめんなさい(^^;)

5.レストラン強盗〜6.ワーニャな親父とその女房

カーディガンを脱いだ女が気がつくともとのレストラン。夫は娘を追って出ていってしまい、ひとりで食事をしていると、 寸足らずの背広を着た男(平沢さん)が入ってくる。 そわそわとした雰囲気で回りをうかがう背広の男。ここの高泉さんとのかけあいの会話のぼけっぷりが面白いです。 お金がなく昨日から何も食べていないという背広の男は、女に食事をおごってもらうが、いきなり女にナイフをつきつけ、 レストラン強盗と化す。レストランのレジからお金(ほとんどなかったんですが(^^;)をとって女を連れたまま背広の男は車で逃げる。 そのころ女の娘が結婚の約束をした男(ワーニャな親父・富岡さん)とその女房(富浜さん)と娘との間で悶着が起こっている。

7.寸足らずの背広の男と色のついた女のドライブ

タイトル読んで字のごとし(笑)ふたりのドライブです。背広の男に脅されて始まったドライブだったが、ふたりの気持ちが通い始める。

8.客の来ないドライブイン〜9.寸足らずの背広の男のドライブイン略奪計画〜10.ワーニャな親父の大騒動

ドライブの途中で車にぶつかってきた男。これは女の娘が結婚の約束をした男(ワーニャな親父)なのですが、そのとき女はそれと知らない。 乗せてくれと言われてドライブインまで乗せる。ワーニャな親父を降ろし、ちょっと休んでいこうかと入ったドライブインで、背広の男がまた強盗を企て、ひと騒動。 一段落したかというときに、現われたワーニャな親父が焼身自殺を企て大騒動になる。ワーニャな親父は、結婚の約束をした娘が 若い男(ドライブインの主人の息子・北村さん)といい雰囲気になっているのを見てショックを受けたのだった。娘と女は顔を合わせるが 娘は派手なドレスを着た女を自分の母親とは気づかない。 ワーニャな親父の自殺は失敗に終わり、ワーニャな親父は女房と心通いあい、元のさやに戻る。 ここでは背広の男は、みんなの非難をいっせいにあびるという活躍をしています(なんのこっちゃ(^^;)。

11.ママと娘の別れ

騒動がおさまり、女と背広の男はふたたび出発する。娘と恋人となった若い男を途中まで乗せていく。そして彼らとの別れ。 娘と別れた女は、自分は娘のことを考えていただろうかと自問し、こんなに早く大人になるのなら、もっといろんなことをしてあげれば よかったと悔やむ。泣きつづける女に、背広の男は静かに車をとめ、音楽をかけ彼女のためにステップを踏む。 ここの平沢さんのダンス(?)は見所です。ばっと上着を脱ぎ、おおっと思ったら、いきなりみょーな動きでステップを踏むんです。 笑いとってますよぉ(^o^)。わたしも笑ってますけど、笑いながらもわたしは感動しているのです。あの動き、誰にでもできるもんでは ないです〜。さすがは平沢さんです。下手側からだと見えませんが、表情も必見なのですよ、じつは(^^)。 背広の男は女に好意を感じているらしい。でも女は彼の気持ちに気づかない。

12.もうひとつの生き方

笑顔を取り戻した女と背広の男のドライブ再開。遠くのほうで派手な衣装にどぎつい化粧の女性らしき人物が手をふっている。これが白井さんなのです。 スクリーンに大映しになると場内どよめく(笑)。この女装の男を乗せて再び車は走り出す。女装の男は今夜、クラブではじめて歌うという。 女と背広の男はクラブに寄っていくことにする。海の底のような店内。妖しげな客達と店員。幻想的な雰囲気のなか、ショーが始まり女装の男は歌い、踊る。 途中で平沢さんがダンスの相手を務めるのですが…重そうでした…(^^;。ここの映像の使い方も面白いです。映っているものは なかなかスゴイ(女装の男のアップとか…)んですけど・・・・。ここの白井さんはすごい迫力でした。すごすぎるっ。圧倒されまくりました。 歌のあと、女装の男はメイクを落とす。男の素顔を見て驚く女。彼女の夫であった。息がつまると言ってわたしから逃げて出ていって、こんなところに 沈んでいたの?と問う女。でも夫のほうは女が自分の妻であることに気づかない。 逃げてるだけじゃない、新しいものを見つけようとしているだけ、と女装の男は言う。見つかるといいわねと女は店を出て行く。

13.寸足らずの背広の男の行く先

女を乗せて、背広の男は車を運転する。夜の街のドライブ。ここのふたりの会話、よいです。好きです。
車が行きついた先は誰もいない公園のボート乗り場。背広の男はボートを出してくる。よく見ると羽根(?)がついている。 湖に漕ぎ出し、背広の男は話し始める。少年の日の恋のこと。離れ離れになってしまった少女を迎えに行こうとしたけど、 うまくいかなかったこと。背広の男は女が少女だったとき、別れた彼だった…? 「あなただったの…?」女の手が男の頬に触れる。そのときボートの底に水が入ってくる。懸命の努力もかなわず、ふたりは水のなかに落っこちる。 いろんな記憶のガラクタが沈む水の中。プロローグでもそうなんですが、この水の中の場面って照明とスクリーンに映る 映像が渾然一体となって、じつに雰囲気が出ています。ホントに水のなかにいるよう…。女と背広の男は離れ離れになってしまい、 背広の男はひとりボートに乗ったまま悄然と去っていく。

14.そこはレストラン

女が気がつくとそこは最初のレストラン。ギャルソンが女の服に料理をこぼした瞬間。同じことの繰り返し。しかし、女は 着替えに出されたドレスを断る。そしてギャルソンに「カーディガンはどうします?」と聞かれ、「いらないわ。」
そして女はひとり車を出す。またキャメルの広告の立て看板。キャメルの男(平沢さん)が現われ、どこまで行くの?と聞く。 「ここよりいいところ」「そんなとこってあるのかな?」「行ってみなきゃわからないわ。」キャメルの男はニヤリと笑い、消えて行く(かっこいいの!)。 スクリーンにはバスが映り、バスの中には女が関わった人達がみな乗っている。女は晴れやかな顔で車を走らせる。

本編はこれで終わりです。暗転のあとカーテンコール。ひとりづつ、スクリーンに顔が大映しになった後舞台に登場します。 この演出もいいですねぇ。

このお話のためのおまけのエピローグ

このおまけのエピローグがいいんですよ。好きなんです。カーテンコールに引き続き、みんなでスクリーンの後ろから出してきたボートに 高泉さんと平沢さんが乗ります。みんなでよってたかって(って感じなんです(^^;)ふたりを着替えさせ、みんながはけると、そこには ボートに乗っているおじいさんとおばあさんが。 おばあさんは言います。「もうおしまいにしようと思っていたのに、昨日あなたに会ったらまだ先があるような 気がして」おじいさんは答えます。「いつだって今からはじまるのさ。」明日に向かっていこうとしているふたり。
月の綺麗な夜、ボートを降りたふたりは腕を組んで幸せそうに歩いていきます。

おしまい《1999.10.3》


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