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贋作・桜の森の満開の下


【スタッフ】
作・演出:野田秀樹
美術:堀尾幸男、照明:小川幾雄、衣裳:ひびのこづえ、選曲・効果・演出補:高都幸男
ヘア&メイク:高橋功宣、演出助手:伊藤和美、舞台監督:廣田進

演出部:瀬崎将孝、原田譲治、多和田仁、酒井千春、川嶋清美、平井香織
福山雅朗、古田亜希子、笠原桃子、西村学、斉藤英明、渡辺千穂
ヘア&メイク:綿貫尚美、山崎智代、美術助手:升平香織、照明助手:吉田泰正
所作指導:津村禮次郎、所作指導助手:中所宣夫、殺陣指導:明楽哲典
パーカッション指導:佐藤一典、プロンプ:小柳奈穂子、大道具:俳優座劇場舞台美術部、石元俊二
小道具:バックステージ、藤波三幸、斉藤幸子、高津映画装飾美術、池上三喜、土屋工房
大仏顔バルーン製作:エアロック、木村ゆい子、特殊効果:右ストレート
衣裳製作:アトリエ永田、永田光枝、衣裳:東京衣裳、かつら:奥松かつら、コマチ・センター
履物:チャコット、舞台・照明・音響操作:新国立劇場技術部、シアターコミュニケーションシステムズ、レンズ
制作助手:越前谷美里、協力:DaB、モードウィッグ ジュードジュンコ、NODA MAP
コスメ協力:M・A・C、チャコット株式会社、履物協力:株式会社デサント、コンバース
芸術監督:栗山民也、制作:新国立劇場、制作担当:北澤哲、高瀬磨理子
主催:新国立劇場

【出演】
堤真一(耳男)、深津絵里(夜長姫)、古田新太(マナコ)
京野ことみ(早寝姫)、入江雅人(オオアマ)、野田秀樹(ヒダの王家の王)
大倉孝二(エンマ/エンマロ、鬼、使者)、犬山犬子(ハンニャ/ハンニャロ、鬼、使者)
荒川良々(赤名人/アカマロ、鬼、使者)、平沢智(青名人/アオマロ、鬼、使者)
宮川大輔(カタメ、鬼)、黒沢あすか(ボッコ、鬼女、クニの人)、東地宏樹(耳鬼、鬼、クニの人、追手)
金子あい(ビッコ、鬼女、マネージャー、追手)、川端良香(マネマロ、鬼女、クニの人)
松下哲(鬼、クニの人)、松島正芳(ヒエダのアレイ、鬼、クニの人、追手)
朱門みず穂(アナマロ、鬼女、貴い女、クニの人)、住吉世メ子(ホレマロ、鬼女、クニの人、追手)
白井圭太(カメタ、鬼、クニの人、追手)、 石村実伽(エナコ/ヘンナコ、鬼女、クニの人)
朝川真帆(モロマロ、鬼女、貴い女、クニの人)、宮下今日子(鬼女、クニの人)
蟹江一平(ブッコ、鬼、クニの人)、福寿直子(エナコ/ヘンナコ、鬼女、クニの人)

【日程】
2001年6月1日(金)〜6月30日(土)月曜休演
新国立劇場 中劇場
S席7,350円、A席5,250円、B席3,150円

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作品の内容など詳しくは新国立劇場のHPへ。舞台写真もあります。



強く印象にあるのはあの舞台の風景です。時がたつにつれ、この作品、主役はやはりあの桜の森だったのではないかと思います。 もちろんその中に役者さんたちが動いてこそ舞台装置は生きるのですが、照明に浮かび上がる満開の桜の森、そこかしこに鬼がいる風景、そしてふりしきる桜の花びらの雨…。

お芝居に関しては、初日は端の席で、物足りない思いをしつつ、なんとなく薄い?これはたしかに毬谷さんと野田さんで観たら、このふたりの話以外目に入らないかも…ものすごい話になるだろうなって思ったけど、二度目にセンターで観たらそういう気持ちはぶっとびました。舞台装置も照明も音楽も役者も…もろもろひっくるめてひとつの舞台ですもんね。
2階席センターから見る奥行きのある桜の森はそれはそれは美しかった…。初日は一階の端のほうの席だったので舞台奥が見えず、かなり物足りないというか、センターで観たいぃぃぃぃっというストレスを感じておりました。だからこそ次にセンターで観たときの感動が大きかったのかもしれません。

劇場に入ったときから、客席全体が桜の森なのねぇくらいの感慨はあったのですが、やはり最初にセットに照明があたり桜の森が浮かび上がった瞬間には息を呑みました。最初、真っ暗な舞台からほのかに明るくなっていく舞台、あちこちに鬼女がいる風景、2階席から観るこの景色の美しいこと。ここ好きなんですよ。舞台の一番奥から耳男が走り出てくる。「桜の花が咲くんだよぉ…」の台詞で桜の森が浮かびあがる。舞台奥まで上からまっすぐ見渡せる2階席は素晴らしかったですが、1階席後方のどセンターで観た千秋楽がやはり一番入り込めた観劇でした。夜長姫にまっすぐみつめられ、その笑顔に吸い込まれるようでした。自らも桜の森の満開の下で夜長姫に相対しているような。
ちなみに2階席、観やすくていいのですが、普段より張り出した舞台設営のためか、舞台前面でのお芝居だと手すりがちょっとじゃまでした。

出演者のファンでもあるわたしとしては、一回くらい1階の前の席で観たかったけど…そんな贅沢を言ったらバチが当たりますよね(^^;。チケットがとれなかったと訴える人が多いらしく、朝5時から当日券に並んだと言ってた人がいたとかで、平沢さんに「チケットどうやってとったの?」って聞かれてしまいました。うむむ、そんなことを聞かれるとは思わなかった。 (どうやってって(^^;…前売りで電話かけてとったのです。)

なお、客席横の壁も赤っぽい桜の木が描かれた布で覆われていて、舞台から続く花道が客席の10列目くらいまで続いています。そのあたりの壁の布の裂け目(?)に役者さんの出入り口もあり、端は端で楽しいこともありました。その花道はそのまま客席通路とつながっており、最初に堤さんと荒川良々さん、2幕で野田さんが9列目と10列目の間の客席通路を通りました。

深津さんの夜長姫は、可愛い、無邪気さゆえの恐ろしさみたいなものは強く感じられたけれども、鬼気迫る凄まじさ、みたいなものにはちょっと欠けるかな。別にわたしは初演信奉者ではありませんが(観てないし)、おそらく毬谷友子さんと野田さんの夜長姫、耳男であれば、身震いするほどのそれは凄まじい妖しい世界であったのではなかろうかと想像できます。
でも、わたしは深津さんの夜長姫、好きなんです。彼女の笑顔や彼女の声が頭に残ってなんだか愛しい感じ。アイドル的な可愛らしさと紙一重のところにある狂気じみた美しさ。笑顔の可愛らしさとその裏に隠れてにじみ出る恐ろしさは、強く感じました。

堤さんの耳男は、爽やか青年でしたね。先日の劇団☆新感線公演の野獣郎のときもそうでしたが、堤さんてなんだかやんちゃ坊主的なイメージ。原作のひとつである「夜長姫と耳男」からわたしが感じた耳男のイメージでは、もっと暗く、そして内面はどろどろと屈折していて、それゆえ夜長姫に惹かれおびえ、かなわぬと思いつつ恋い慕い呪わずにはいられなかった、そんな感じでしたが、そういう暗いイメージは堤さんの耳男にはまったくなかったですね。耳男、なんかカッコイイし、夜長姫とも美しい似合いのカップルに見えてしまった。呪うか殺すか争うかしないといけないくらいの運命的な関係にはちょっと見えないというのが難と言えば難なのかなぁ。
耳男はこうでなくちゃというようなこだわりは別になかったのですが、堤さんの「橋からの眺め」で観せた、暗い、どうしようもない弱さを背負った男のイメージからして、そういう耳男になるんじゃないのかなって勝手に思っていたので、ちょっと想像とは違ってました。やたら爽やかで可愛くてちょっとカッコイイ、これなら夜長姫にも思われて当然な、なんだか普通だなぁって初見のとき思いました。だけどラストのあの展開に無理は感じなくてすっと入っていけました。美しく辛く、桜吹雪の中のふたりは本当に美しかったです。
それにしても、恵まれた容姿(って言葉がぴったり)。堤さんて、TVで観てもさほどいいと思ったことはなかったのですが、舞台で本当に輝く人ですね。このところ何度か舞台で拝見するようになって魅力的な人だなって思うようになりました。可愛いって思うときとカッコイイと思うときとありますが、共通して思うことは美しい男の人だということ。顔ももちろんですが、とくに腕が美しいと思います。
邪気のない青年という感じで、わたしが思っていた耳男のイメージとはちょっと違うけど、それはそれとして堤さんの美しさを堪能した舞台でもありました。汗だくになっていても美しい。別にわたしは堤さんのファンじゃないですけれど、しみじみとそう思います。
ラストシーンで降りしきる桜の花びらが堤さんの腕にいくつもくっついて、それがまた美しかったですね…。

耳男と、古田さんマナコとの場面、すごくいいですよね。最初に王の前に出て、タクミの腕を見せてくれといわれ、お互い偽者であるふたりがごまかすために変なことする場面といい、2幕の自転車で坂道を下る場面といい、あの絶妙なコンビネーション…。まっすぐな堤さんにくねくねと何でも来いの古田さん、いいコンビです、ホント。
入江さんのオオアマもなんか好きで(笑)とくにあのゲル状になるところとか(^^;;
鬼の大倉さん、荒川さん、犬山さんもそれぞれ個性的で素晴らしいハーモニー。なかでも犬山さんの声の表現力ってすごいなぁって思います。変幻自在。
この濃いメンバーの中にいて平沢さんはとっても普通(笑)でしたが、それがこの4人の中で全然違う魅力となってたようにわたしは思いますが、いかがなもんでしょ?それと、やはりあの美しい素晴らしい動き、あなたひとり、足に、いや全身にばねつけてます?状態でしたが(^^;;。ミュージカルで活躍しているダンサーがお芝居の中でいかに美しい動きを見せたところで演劇ファンはそれほど興味はないんだよなぁと、これまでの経験からわかってはいるものの…。
個別に平沢さんの見所を語り始めると長いので、それはまたあらためて別に取り組みます(^^;。

さて、初日に実はいっちばん印象に残ったのは、何度目かのカーテンコール。舞台に出てきた出演者達。平沢さんは下手側の端のほうに立っておられました。そこに堤さんがいらっしゃって、平沢さんの左側の隣に立ちました。わたしは、おお(^^)と思ってふたりを凝視(笑)していたところ、堤さん、顔は笑顔で前向いたまま、右手で平沢さんの左手を探している模様。ん?何やってんのかなぁと思って見てたら堤さんは平沢さんの左手を探しあてて握りました。えっ?…ってちょっと思っちゃいましたが(^^;実は単にみんなで手をつないで万歳、客席に挨拶しただけだったんですけど、その万歳をするまでわりと時間がかかったので、その様子が、つきあいはじめて初めて手をつなぐカップルのようでなんだか可愛かったのでした(^^)(こんなこと書いてごめんなさーい。>堤さん、平沢さん。この二人、同い年なんだよなぁ…同じ日生まれの…)

作品については…今回のは原作のある話だし、ストーリーがそれなりにあってわかりやすいとは思うのですが、満開の桜の下の狂気と夜長姫と耳男の話、オオアマの国作りの話と鬼の世界の話とがごっちゃになって、絶妙に絡み合っています。わたしはもともと理詰めで考えるタイプじゃないので、多少意味がわからないところがたくさんあろうと、全然OKなのですが。
合わない人だと単なる意味不明な言葉遊びも、ツボにはまって面白いし、理屈ではよくわからなくても、心の琴線に触れるというか、なぜか泣けてしまう。観ているうちにじわじわじわと心に入り込んでいくのですよね。
今回は、ラストの台詞「いやぁ、まいった…まいった」の、ふたつめの「まいった」この耳男の台詞。これがとどめを刺しました。
ただ、今回の舞台、息がとまりそうなくらいに桜の森に入り込み、ぽろぽろと泣きながらも、なんとなく本当ならもっと転がっていけたような…そんな物足りなさを感じた気がするのは、爽やかすぎる耳男と可愛い夜長姫の、絵になりすぎる美しいカップルのせいでしょうか?それにしても美しい、桜の森とともに飾っておきたい絵のような綺麗な舞台でした。

好きな場面もたくさんあるし、書きたいことはもっとあるのですが、これ以上は時間的に無理のようです。
平沢さんの見所ポイントを盛り込みつつ、感想述べつつの観劇レポートは書きかけてはいますが、アップするまでには至りませんでした…。物語や台詞等、詳しく知りたい方は、戯曲が販売されていますので、そちらを購入し読んでいただくとして、ここには、わたしの観た、わたしの頭の中にある舞台を、わたしの言葉で書いてみようと思っています。もしも楽しみに待っていてくださる方がおられるなら、いつかアップしますので、気長に待っていてください。
さて、明日は「天翔ける風に」の初日。あの『贋作・罪と罰』がどんなミュージカルとなっているのかホントに楽しみです。《2001.7.10》


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