ミュージカル

天翔ける風に

〜野田秀樹「贋作・罪と罰」より〜
●内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。「わたしが間違ってたら許してね。」…じゃなくって(^^;間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね!
●参考資料:パンフレット、戯曲「贋作・罪と罰」(野田秀樹著「解散後全劇作」収録)
●場面名はわたしが勝手に作ったものがほとんどです。

ACT2
理想・思想・妄想
M22序曲が終わり、すだれが透けるとそこには座って瞑想する志士達。カッコイイのよ。この場面。ヤマガタ(平沢智)は志士達の中、ひとり客席に背中を向けて座っています。そして歌い出すと共に立ちあがる。才谷(畠中洋)は、ひとり上段にやはり背中を向けて座っています。
ヤマガタの煽動に答え、志士達が目を開き、歌い出し、踊り出すとなんか冷静さを失ってしまうわたしでありました。
(M23 理想・思想・妄想/志士ヤマガタ、才谷、志士達、聞太)

ヤマガタを中心に、立ちあがれ、長い眠りから醒め今こそ新しい時代を開くのだ。将軍の首をとれ!戦いの幕開けだ。旗をふれ!と歌う志士達。
途中、ヤマガタ以外の全員が赤い旗(この段階では布というべきか)を取り出し、振ったりポーズを決めたりとにかくカッコいいのだ。ヤマガタさんはちょっと離れて壇上にいたりするので、ヤマガタも観たいし志士たちも観たいしでホントにジレンマ(笑)オペラグラスなんて使ってる場合ではありません。ヤマガタを捨てて志士達を見ているときも多かったりして。 志士達が赤い布を闘牛士のごとく構えてポーズをとるところなんてかっこよすぎます。
途中でさおのついた旗も出てきて、男性はその旗、女性は赤い布を持って踊っています。観ているときは、ちゃんとわかって観ているのですが、その旗がいつ出てきたのか思い出せない(^^:。志士達が数人づつのグループに分かれて順番に旗を振り下ろしていくところとか、カッコよかったなぁ。
いろいろなフォーメーションもあり、人の動かし方が冴えている。さすがは謝先生だなぁと思います。

結局何回観てもここは冷静に観れませんでした。ドキドキして。むちゃむちゃカッコイイのです。というわけで記憶曖昧(笑)断片的にはすごく克明なんですが、順番とか頭のなかでごちゃごちゃ。1幕と混ざってたりするかもしれません。
男性がまわりで旗を振り、ヤマガタをとりまいて女性6人がアクションを決める場面もありました(いつもおおっって思っていた)が、どこだったのか覚えてません(^^;;
TV放送が待たれます。さて話戻って。

才谷は、それは妄想だ、口先ばかりではないかと志士達に問う。
ここで1幕冒頭の酒場の場面での議論がさりげなく繰り返されます。「自分で将軍の首をとる気はあるのか?」と問う才谷に「正義のために論じたまでだ。」と答えるヤマガタ。「お前、酔っってるな?」「お前達こそ議論に酔っている…」
実行者はもう立ち上がって、いやもう事をすませているかもしれない、お前達のように口先だけであってほしいと言い残し才谷は去ります。
細かいポイントですが、このとき、ひとりの志士が才谷に「どうしたと言うんだ、才谷!?」って言うんですけど、この志士(たぶん川本さん)の台詞というか声というか、なんか印象的です。誰だろう?ってチェックしてしまった。

才谷が去ると、溜水がこれはもう口先だけのことではないと志士達を煽る。明日は大川の花火大会、人々が中空の騒ぎに気をとられている間に地上で騒ぎを起こすのです。「ええじゃないか」の踊りを利用し、新しい時代を開く運動を起こすのです。
志士達の「騒ぎの始まりだ!」という言葉にヤマガタ、「いいや、歴史の始まりだ!」(かっこいい〜)
そしてその先頭におたちなさいと溜水と志士達は聞太をそそのかします。「聞太、先頭に立て」とヤマガタが歌い、ここで赤い旗をヤマガタは聞太に投げて渡すのですが、この渡し方が…うまいっ。かっこいい…!
狂喜乱舞
赤い旗を振る聞太を先頭に、群衆はスローモーションの動きで下手から階段を上がり、上段をわたって上手へ。ヤマガタは旗を持っていませんが、両手をひろげ大きな動きで群集を煽動するスローモーションの動きがカッコイイです。
(M23A 狂喜乱舞/群衆、ヤマガタ、才谷、志士達)
なんとか衝突を避けようと幕府側と志士達の間で情報を操作する才谷。上段で才谷とヤマガタのかけあいの歌。ここ、好き!
しかし連日、幕府馬車隊に先周りされることを不審に思い、誰かが密通しているのではないかと志士達は疑い始める。何度も衝突が回避されることをやはり不審に思った幕府側だが、都と溜水が偶然出会ってしまい、裏で情報をあやつっている人物が見えてしまった。それは竜馬
溜水に竜馬の居場所を教えてくれと頼む都。竜馬を殺すつもりですか?と問う溜水。都は、司法官である自分はそんなことはやらない、が、自分にはできるのだと答えます。

「ええじゃないか!ええじゃないか!」と歌い踊る群衆たち。ここは男性は上手側で旗をふり、女性達は下手側からええじゃないかええじゃないかと踊りまくる。舞台前面に敷かれた板の間(?)に女性達の下駄の音が響き渡ります。
何度も先回りされることに業をにやしたヤマガタは、今宵こそやる、銃声ひとつ、歴史の始まりだ!と、止める才谷を振りきり日比谷門集結を強行します。
聞太を先頭に迫る群衆を、もう才谷の情報をうのみにしなくなった幕府の馬車隊が阻む。
ここの途中から英が登場し、彼女のソロ歌がかぶるのですが、緊迫感が盛り上がり、とってもいいです。人をのみこむ江戸という町に翻弄される人々…
(M23A 狂喜乱舞/群衆、才谷、ヤマガタ、志士達、英)
そしてついに衝突が起こり、先頭の男が馬車にひき殺される事故が起こってしまう。舞台中央で旗を振っていた聞太はその瞬間、旗を空中に投げ、その旗に照明があたり、一瞬のうちに場面が転換します。こういうやり方、ホントにうまいなぁ。

ひき殺された男は聞太であったらしい。英は遺留品を確認し、智と悲嘆にくれます。どうして父が幕府の馬車にひき殺されなくてはいけなかったのか?清には本当のことは言えない。将軍様のための立派な殉職だったと言うのよと英は智に言い含めます。
聞太轢死の瓦版
罪もない善良な市民・聞太をひき殺した幕府は許せない!このままじゃええわけない。と瓦版屋(川本昭彦)を中心に町の女性達が歌い踊ります。ここはアンサンブルの女性全員(6人)登場です。(M24 聞太轢死の瓦版/瓦版屋、町の女達)
新しい闘争
ヤマガタと志士達は、下手の壇のところに集まって、聞太の死によって幕府批判が盛り上がっている世相をみて、「ええわけないじゃないか」という新しい闘争を始めようと画策します。ここの「名づけて、ええわけないじゃないか、だ。」って言うヤマガタの台詞がなぜか笑える。平沢さん、間がうまい。それと、これだけならまあともかく、そのあとに志士達が「おお〜」と感心するんですが、それが妙に面白い。この場面は、初見のとき、このひたすら真面目なミュージカルの中で唯一、野田世界の雰囲気がするところだと思いました。
さて、先頭に立つ人物を探す志士達。誰か立て!と言いながら誰も立とうとしない。そのとき、上手スロープで英がすくっと立ちあがる。
「そうだ、英がいい」と、ヤマガタ。殺された聞太の娘、江戸中の同情が集まる。しかも女だ。けなげで可憐で…プリっとした被害者(どういう意味なんだろう(^^;)ってことになる。

そこに近づいてくる英に、「おーい、英」と駆け寄るヤマガタと志士達。父親の遺志をついで先頭に立て!と迫る志士達に、本当に父には志があったのか?その志は誰によって殺されたのか?と英は問います。苦し紛れに「それは竜馬だ」と言うヤマガタ。志士達もおもねって、幕府に密通して馬車隊を引き入れたのも竜馬じゃないのかと言い始める。竜馬がわれわれを売ったなんてめったなことを言うな!と英は怒るが、志士達はますます「竜馬の首をとれ!」といいつのる。
しかし英は、「やるときは一人でやるわ。わたしは群れるのが嫌いなのよ!」ときっぱり言い放ち、去って行きます。(英、カッコイイ!)

ここは日替わりのお笑い場面でした。神戸でも唯一笑いの起こる場面だったような気がしますが、東京へ行って盛りあがっていったようです。駆け寄るヤマガタに後から駆け寄った志士、幸村さんがぶつかって玉突きのようにぽんと跳ぶヤマガタ。このコンビネーションも素晴らしい(^^)
また、英に「竜馬の首をとれ!」と迫るヤマガタ、妙な唸り声(これも日によって違った)を出して、英が去って行ったあとに幸村さんに「力みすぎ」とか「鼻息荒すぎ」とか日替わりでツッコミを入れられていました。このぼそっとツッコミを入れる幸村さんの間がホントに絶妙で、毎回おかしかったです。
踏み越える
自分は死んでないのに、死んだと思って追いつめられる英を助けてやらなくては…と出て行こうとする聞太を溜水は止める。英さんは、今、決意しようとしている。彼女は決意することのできる人なのですよと。いわば踏み越えることのできる人間なのだと。溜水は自分と英がそうだと言う。
(M25 踏み越える/溜水)

どうしてもと言う聞太を溜水は突き飛ばし、集まっている志士達のところに追いやる。死んだと思っていた聞太が姿をあらわしたのを見て、志士達はびっくりするが、いまや聞太の死は「ええわけないじゃないか」闘争の旗印となっている。いまさら生きててもらっては困ると志士達に迫られ、聞太は逃げ出します。

逃げた聞太を追って走り回る志士達。2〜3人づつの志士達が順番に出てきてはセンターでアクションを決めて走り去って行きます。入れ替わり立ち代わり現れる志士達のスピード感あふれる展開に一瞬も目が離せません(^^;;
ここでヤマガタが奥から登場するとき、うずくまった福永吉洋さんの背を台にして飛び出てくるところがあるのですが、ふたりの息もぴったりでカッコイイです。
ここは才谷が、誰もが志のためにひとつの命を狙い、走りまわっているのか。そして英、立ち止まる勇気を持てと歌います。(M26 走り続ける者たちへ/才谷、英)途中から英も現れ歌います。
とうとう聞太は志士達に見つかり捕らえられます。(ロープ使いが面白い)このとき、舞台前面でソロで見事なアクションを決めていたのは幸村さんです。

そんなおり、溜水は才谷を「ひとごとではない。狙われているのはあなたもです。」と空家へ引っ張って行きます。そこはあの老婆おみつの部屋。幕府ばかりではない、勤皇の志士達も坂本竜馬を狙っているのだと溜水は言い、鍵をかけて出て行きます。溜水は都に会い、黙って鍵を手渡します。
英と都
そして町でばったりと出会う英と都。照明で一瞬で世界が切り替わります。都は聞太のことでお悔やみをいいつつ、じわじわと老婆おみつ殺害事件の犯人について追い詰めていきます。溜水はいつの間にか二人の話を盗み聞きしています。
都は、推理を展開し、これは信念の犯罪だ。左官屋じゃない。三条英、あなたが殺したんですと。そして自首を薦めます。自分はもう終わった人間だけど、あなたは違う。そのあとに待っている生活と、未来を大切になさい。太陽におなりなさいと諭します。
(M27 また昇る太陽に…/都)
おりしも時代が変わろうとしているとき、新しい時代が来れば牢も開くでしょう。坂本竜馬はきっと時代を変える。竜馬ならやりますと言う都。
じゃあ、わたしは牢の中で竜馬を待つわけねという英に、都は「あるいは、その竜馬をあなたが殺すかです
あなたが竜馬を殺すなら、わたしは信じつづけます。犯人は左官屋だと。
これは取引なのね…と言う英に都は鍵をひとつ手渡し、才谷が待っていると告げます。なぜ?といぶかしる英に都は「たしかもうひとつ名前がありましたな」
それは…竜馬
生きたい…
志士達はいよいよ今夜江戸城へ乗りこもうとしています。合図の銃声はやはり英がよかろう。しかし、その前に竜馬が単身で江戸城に乗り込んでしまった場合は自分達の計画が台無しになる。そこでヤマガタは聞太に、生きていたいなら竜馬を殺すよう迫る。
聞太は自分が死ぬか、今や志士達にとって邪魔になってしまった竜馬を殺すか、自分で選べとヤマガタに告げられる。「今宵一夜、銃声ひとつで歴史の始まりだ」と言い置いてヤマガタと志士達は去ります。ひとり取り残された聞太は、生きたい!と切々と心情を訴えます。
(M28 生きたい/聞太)
溜水と智
切ない聞太の歌が終わる頃、舞台中央は、蜘蛛の巣のはった空家となっています。かつて溜水が才谷に貸した家だが、才谷は溜水が用意した隠れ家(もとおみつの家)にいるのでここにはいない。
その空家に智は溜水に騙されて連れ込まれます。ドアに鍵をかけ智を追いつめる溜水。
今まで自分で決めることなどなく誰かのために犠牲になることを受け入れひたすら受身だった智は、ここではじめて自分で自分の心を決めます。英の殺人のことを聞いても、密告したければするがいいとつっぱね、そして自らを守るために溜水に拳銃を向ける…引きがねを引く。弾は溜水の顔をかする。智は全身で拒否します。この人を愛していない、愛は犠牲ではない(M29 迷い/智)
わたしは殺してしまう!と叫びつつ、引きがねをひいた2発目の銃弾は不発。もう一度撃てと迫る溜水に、智は拳銃を捨て、「わたしを返して!」と決然と言い返します。
拒否された溜水は苛立ちをあらわにして、叫びながらそのへんの物をひっくり返しますが、鍵を智に投げて「それで開けて早く帰ってください」と告げます。走り去る智、ひとり取り残された溜水は智が置いていった拳銃を拾います。
風よ、もしも
上段上手から英が現れ、歩きながら歌います。風よ教えてほしい…
(M30 風よ、もしも/英)
英は、才谷がいるおみつの家へ向う途中。あの日、おみつを殺したときと同じ道を通って。
下手に至ったところで、母親に対する言葉を口にします。わたしはここ、いつも泣けてしまうのです。「かあさん、どんなことが起こっても、どんなことを聞いても今までのようにわたしを愛してくれますか。生きてください。大川の風はどこにでも夏を運んでくれるんです。」
そして、今までふいていた風がやみます。気持ちを振り切るような英の「風が…やんだ…」
おみつの家
決意した英は坂本竜馬を殺すために、都にもらった鍵を使い、家に入ります。
そして、才谷と相対します。
ここの音楽、好きです。緊迫感があり、また英の心情を表すがごとく心が引き裂かれるように切ない。(今回、弦楽器の音が効果的に使われてるなって思うことが多いです。)
「刺客か?」「あたしだよ」「英…。」
そして剣を合わせるふたりの立ち回り、叫び。
竜馬を殺しに来たという英に、そんなことをして何が手に入るんだ?と才谷は問う。理想よ!と答える英に、才谷は言う。一つの命を何万という志と引き換えにすることなとできない。死んでいい人間などと出会ったことがないからだと。誰を死なせ誰を生きさせるなどと誰にも決められない。
でもあたしは決めたのよ!とおつばさんを自分が斧で殺したと才谷に告げ、英は叫ぶ。 たとえ自分が自首するとしてもそれはそのほうが罪が軽くなるからよ。老婆とおつばを殺したことを罪とは思っていない。人々のために善行をしようとしたのよ。思想を信じておみつを殺した。本当ならみんなから祝福されるべきことたったのに、罠にはまっただけ。
「血を流したんだぞ」という才谷に、「誰でも流す血よ!」戦争で冷静に人を殺すのはどうだっていうの。
わたしは自分の罪がわからないの!今ほど強く自分が正しかったと思うことはないわ!と英は叫びます。

ぼろぼろと泣きながら「才谷、わたしが間違っていたら許してね」と言う英に才谷は言います。
「英、今すぐ外へ行って十字路に立ち、あなたが汚した大地に接吻しなさい。そして世界中の人々に対し「わたしが殺しました」と言いなさい。そしてまっすぐに牢に入りなさい」と。
その牢を俺がきっと開けてやると。新しい時代とともに。

英が問う「わたしが待つの?」という言葉に「おまえが牢の中で俺を待つんじゃない。俺が牢の外でお前を待ち続けるんだ」と才谷は答えます。
そして一緒になるんだ。大川の彼の岸辺で
きみ、前に言っていただろう、大川の景色に抱かれている気がすると

英は、泣き崩れ才谷の胸で抱きしめられます。
「人殺しを抱きしめる気持ちってどう?」「人殺しってあったかいんだなぁ」
才谷の胸に顔をうずめる英は本当に可憐でした。

ぼろぼろ泣いていた英が「ありがとう、才谷」…と、すっくと立ち上がり「わたしちょっと行って来る」って言います。そして「俺もちょっと行って来る。将軍をぬかづかせ、大政を奉還させてくる」と言う才谷。
英はたまらず「竜馬!」と呼びかけ、「なんだ?」と問う才谷に「生きてろよ、あたしのかなたで」
「かなた?」
「彼の方角と書いて彼方(かなた)と呼ぶのよ。だからおまえのいるところは、これからはいつもあたしの彼方よ。」
才谷は黙って微笑み、去って行きます。英は清々しい表情で歌います。
(M31 大川の向こう リプライズ/英)
江戸城・城門前
舞台上段上手より、溜水がふらりと現れる。「もうここには用はない。退屈しか残ってない…」とつぶやく溜水を「何をする。ここじゃいかん」と門番(萩原好峰)がとがめるが、溜水は意に介さぬ様子で「何か聞かれたらアメリカへ行くと言っていたといいなさい」と言い残し、拳銃を取りだし自分の頭に銃口を当て…銃声。スローモーションの動きで倒れていく溜水と駆け寄る門番。

「銃声だ!」と、飛び出してくるヤマガタと志士達。ここは東京公演では客席から数人の志士達が走り出てきました。通路後ろの席で見たときびっくりしましたよ。このとき、本舞台では、白い十字路があっという間に用意されます。
「将軍の首をとれ!」と江戸城に向けて走りだそうとするヤマガタと志士達(M32 理想 リプライズ/志士達)だが、そこへ才谷が立ちはだかる。(東京では才谷も客席から現れました)
「お前達は大地を血で汚す。志も刀もこの十字路へ置いて行け!それができぬもの江戸城門は通せぬ!」そして、誰だ?と言う問いに「土佐藩士、坂本竜馬だ。」と名乗ります。(才谷、かっこいい!)
「将軍をぬかづかせる。天の帝に向って。血の代わりに金を流す。天にたくわえた宝石箱をひっくり返すんだ」と才谷は今までため込んだ金を高みからばらまきます。ここ、才谷がひっくり返す箱が空なのが気になるけれど(ちょっとでいいから入れておいてほしかった)キラキラとまぶしい金色の光が降ってくるようです。
十字路
その光の中、スローモーションの動きで志士達は去って行き、舞台奥から髪型を整えた英が現れます。
白い十字路に現れた英は、語ります。「覆された宝石のような朝、何人か戸口にて誰かとささやく。それは神の生誕の日。」
才谷、音が聞こえてきたよ…、それはわたしには雪の音色。雪の朝は何も聞こえないのに外が雪だとわかる。
そして、「わたしが汚した大地よ、どうぞ、この音で静まってください。」大地に接吻し、「三条英、わたしが殺しました」
その瞬間、ホリゾントを覆っていた簾が落ち、明るいまぶしい白い光の世界となります。暗い時代が終わり、新しい時代の始まり。

上手上段から智が歌いながら現れ(M33 果てしない道を リプライズ/智)、大政奉還を告げる将軍・幸村さんのナレーションがあります。この間ずっと上段にいた才谷が「将軍がぬかづいた!江戸の町を走り続けてきた亡霊のような志が鎮まっていく。英、お前の接吻の力だな!」と叫びます。
白い旗を両手に持った人達が現れ、一面の白い世界を作ります。ここが綺麗なのです。前の席だとよくわからなかったのですが、後ろのセンターで観たとき、感動しました。また照明が綺麗なんだ…。
そんなに広い場所ではないのにアンサンブル全員がダイナミックに旗を振る様は圧巻。(M33 果てしない道を リプライズ/コーラス)
額づいたままだった英は、旗を持った人達が現れると立ちあがり、静かに奥に去って行きます。
牢獄
都に手首の縄をかけられ、連れてこられる英。ここの英は姿勢がよく美しい。白い長いローブのような上着に着替えています。牢に入る英。
上手スロープのところにて牢から才谷への手紙を語ります。「才谷、元気か?」で始まり、自分が寒いところに送られていること、才谷はきっといまごろ京都で中岡慎太郎くんと湯豆腐でもつついているだろう、身辺に気をつけてほしい。寒い牢にいると夏の大川の川べりばかりが思い出される。思い出すだけで緑が目にしみる。あの景色が見たい…あの景色に君と一緒に抱かれていたい…。そして「あたしの彼方へ。英」
(M34 大川の向こう リプライズ/英)

下手壇上にはおりしも京都で中岡慎太郎(川本昭彦)と湯豆腐をつつく才谷=坂本竜馬。とつぜん現れる刺客(聞太)に、二人ともふいをつかれて斬られる。才谷は斬られて舞台中央まで来て倒れますが、そのとき、上手に向って手を伸ばします。センターで観たときにはそうと思わなかったのですが、上手の端のほうで観たときに、あれは英に向って手を伸ばしているのだとはっきりと感じられていっそう切なく、その後の英の独白に号泣してしまいました。

上手から上段のセンターに歩いていった英はそこで才谷への次の手紙を語ります。英の口調が優しくなっています。「才谷、元気ですか?」…もうすぐ新しい時代の扉が開かれるんだそうですね。それはきっとあなたが開いたのでしょうね。恩赦で自分の牢も開かれるのだけれど、許されたとは思っていません。けれど終生、誠実な人間になるよう努めます。いろんな顔がわたしを出迎えてくれるでしょうけれど、その中にあなたの顔を見つけるのが喜びです。人殺しには似つかわしくない言葉だと思うけれど、「愛しています。」…「あたしのはるか彼方へ。英
(M34 大川の向こう リプライズ/英)
幕が降りる直前の英の表情が本当に美しいです…。
カーテンコール
再び幕があがると、カーテンコール。出演者全員が順番に登場します。
全員登場し、お辞儀をしたあと、「ええじゃないか」をみんなで歌いながら踊り始めると、下手からバンドの方々が登場します。東京ではそれぞれ楽器を持って登場されていました。素晴らしい生演奏、ありがとうございました!バンドの方々が帰って再び演奏を始めるまでちょっと間(^^;があって(当たり前だな〜)音楽始まると再び出演者達はお辞儀をして幕が下ります。たいていこれで終わることはなく、この後何度となくカーテンコールが繰り返されるのでした。東京の千秋楽では一幕最後の「果てしない道を」が再現(歌だけ)されたそうな。観たかったですね…千秋楽。毎回、ホントによい舞台をありがとうって気持ちになって心からの拍手を送ったカーテンコールでした。
ACT1へ

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