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TS Musical Foundation
AKURO

AKURO 悪路
●内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね!
●参考資料:パンフレット、高橋克彦著「火怨」


一幕

オープニング〜御伽草子I【悪路王の首】


一幕の始まりは若手さんたちから。開演前には緞帳かわりの絵(ねぶたの絵のような)が下りていますが、暗転となりそれが上がると、赤い照明を背景に石壁みたいなセットの左右に岩 の塊のようになって、みなさんがうずくまっておられます。 最初はそれもセットの一部かと思ってたら、手を差し出して動き出すので、おおっ! 人だったんだって思いました。
弦楽器の音が響くおどろおどろし〜い雰囲気のなか、全員(20人いましたから全員よね?)が舞台前面 の階段のところにずらりと並んで、コーラスじゃなくて、叫びというか、みんなで状 況説明の台詞を言います。(最初はほんとに誰が誰だかさっぱりわかりませんでした が、だんだん顔が見えてきて、あ、この人は○○さんかなーって思いつつ見てまし た。)
ここの説明台詞、この時代とか登場人物の予習が出来ている人はなんとか聞き取れて わかるかもしれませんが、まったく予備知識のない人はまずさっぱりわからんと思い ます。 な、何言ってるんだーこのひとたちはーっって感じじゃないですか?
でもまあ、雰囲気…ということで。これが聞き取れなかったからといって、致命的な ことにはなりません。あとでパンフレットを読むなりすれば、なるほどと思うでしょ う。
とにかく、大和朝廷が蝦夷の討伐のために坂上田村麻呂を将軍にして、4万の軍勢を ひきいてやってきて、蝦夷は負けて、蝦夷の王といわれていたアテルイは死んだので す。 アテルイがどうして死んだかとか、蝦夷が大和を憎むのはなぜかとか、あとでも語ら れますから、いいのです。
ステージ前面の階段つくりといい、こういうコロス的な大勢の人使いといい、ニナガ ワさんの舞台みたいだなぁと思いました。(ラストの、ひとりづつ立ち回り場面のあ るところなど、劇団☆新感線のようだなぁと思ったり、地球ゴージャス「クラウディ ア」のようだなぁと思ったりもしました。)

次に、御伽草子の場面になります。
この場面では鬼の面をつけていますから顔は見えませんが、平澤さんも含め蝦夷の人達や、坂元さんが登場します。この場面、こだわりがあるのはわかるのですが、別に面つけなくてもいいことな い?この御伽草子の中では人ではない鬼ってことを言いたいのかな?

烏帽子姿の吉野圭吾さん、川本昭彦さん、西村直人さんの歌から始まる御伽草子の場面。歌い手さ んたちは鬼じゃありません。 それにしても、センターの吉野さんが全身にむっちゃ気合入れてものすっごい一所懸 命歌うもので思わずこっちも力が入ってしまうこの場面。。。でも途中、 「真っ赤な口は耳まで裂けて」というところで、かぱっと口を開く吉野さんがなんだか可愛くて(笑)お気に入りです。

その後ろには、表は色柄で裏には白い紙をはったプラカードのようなものを持って集 まる若手さんたち。この白い面を集めて大きなスクリーンに見立て、鬼の映像が映し 出されたりするんです。なかなか面白い。
次に、平野亙さん、福永吉洋さん、武智健二さ ん、藤森真貴さんの4人が登場し、すばらしい動きでビシバシ踊り(動き)まくります。 平野さんは藤森さんをリフトした状態で登場。
ここでなんで鬼に藤森さんが入ってるのかなぁって思ったのですが、川本さんが歌い 手さんになってしまってるから、彼の代わりなんだよね、たぶん。
次に、「知恵の袋は赤頭(アカガシラ)〜!」の駒田一さんと、「一の家来は高丸(タ カマル)で〜」坂元健児さん。
次に若手さんたちが出迎える中(?)、鬼嫁となりし「鈴鹿御前〜」の彩輝なおさん。華 やか。
そして、そのあとに軽やかに登場する兄弟鬼の右側(たぶん兄)、ブルーの衣裳が平 澤智さん。
大嶽丸(オオタケマル)人首丸(ヒトカベマル)!二人揃って暴れ者〜」 ここ平澤さんの「オオタケマル!」の口上がなんだか可愛いわとか思ってしまうわた しって変?(笑)
ちなみに人首丸は藤本隆宏さんです。
この場面で、さっと両手を広げ、ポーズを決める平澤さんの腕や手が!動きが!かっこ いい〜っと既に盛り上がるわたしなのでした。このへんから既に目がくらんでいる?(笑)
この場面の歌詞(御伽草子)はパンフレットの最初のページに載ってます。
そして金ぴかの冠つけた派手な衣裳のヒーロー田村丸今拓哉さん)が登場し、鬼達をばっさばさとやっつけて〜「めでたやー!めでたやー!」 歌い手さん三人と若手さんが歌い踊りながらはけてゆきます。 歌い手さんたちは客席まで降りてきて踊り狂って(?)ました。

達谷窟の子守歌/夢の又夢〜始まりし時が来た/大地のテーマ

御伽草子が派手派手しく終わり、その流れのまま次の場面へと。場面のつながりは、アケシ(彩輝さん)が後ろの石舞台をさまよい、不思議な子守り歌が流れている。 そんな感じじゃなかったかと。

そんな中、客席通路から、安倍高麿(坂元さん)と、その部下の小者の源太(西村さん)が 明るく登場。このふたりは都から陸奥にいる田村麻呂のところに派遣されてきたので した。源太はなんとかして手柄をたてて出世したいという野望を持っているのだけ ど、なんだか見込みのなさそうな主に祖父の時代から仕えているので、なんとなくあ きらめムード。「夢の又夢」を歌います。でも明るくておおらかでまっすぐな性格の高麿はとっても前向き。

能天気な二人が高麿の書いた鬼の絵の話などしていると、田村麻呂の配下の赤毛(駒 田さん)が迎えに来て、ふたりは坂上田村麻呂のところへ向かいます。 その途中の道で、高麿は「白い鹿」を見るのです。鹿の精霊、藤森さん、美しい。 あ、白い鹿!って高麿が言ったとき、赤毛がはっとした顔をします。源太には見えな い白い鹿。それはじつは、アラハバキの神の使いであり、蝦夷にしかその姿は見えな いはずの姿なのでした。
この場面(大地のテーマ)、緑の照明が舞台を包み、坂元さんの声が朗々と響き、その前を鹿の精霊が踊るのです。
その前に、石のセットが転換して、音楽が高まる中、蝦夷の民達が自然と共存して日々の生活を送り、そこかしこに黒服の亡霊たちもいて、、、というところもすごく好きだなぁ。 最後に鹿の精霊・藤森さんが客席に背中を向けて(高麿のほうを向いて)、両手をあげて手、首、身体をくねくね(という表現はちょっと違うような気もするが)と動かすところが妙に好き(笑)

鉄の谷/御伽草子II【鈴鹿御前】〜達谷窟の子守歌

さて颯爽と登場する坂上田村麻呂(今さん)。爽やかなのだ、ここの田村麻呂様。
まだ来たばかりでみちのくについてはよくわからないと言う高麿に、「いつかお前にもわかる、このみちのくの良さが」と遠くを眺める目で言うときの田村麻呂は、本心からそう思ってるのよねと感じます。
ここで田村麻呂は、高麿に蝦夷の隠れ里である「鉄の谷」を捜索しろと命じます。ただしいまだ抵抗を続ける蝦夷達(「あらえびす」と呼ぶらしい)を刺激せぬように極秘にな、と。蝦夷の刀 は騎馬戦で使いやすいように工夫され、素晴らしい技術で作られている。その秘密は 鉄の谷にある。そこを押さえない限り、蝦夷は抵抗をやめないだろう。鉄の谷を制す ることは、このみちのくの平穏のためであると。ここでとうとうと、「こどもたちの 将来のために平和な世の中を教えてやらねば」うんぬんと教育委員会みたいな理想を 語る田村麻呂に感動する、まっすぐな高麿。

ここで、田村麻呂は高麿に部下として使えと紹介するのが、3人のもと蝦夷。大和に 恭順を示して、田村麻呂に仕えている「にぎえびす」(どんな字書くの?)の「青 蛙」(多根周作さん)と、「赤毛」と、もうひとり、「黒斑」(岩井章悟さん)。黒 斑さんは、最後のほうに、けっこう目立つ場面で出てきます。(2回目からはわかっ たんですが、初見のとき「この人誰だっけ?」と思ってしばらく考えてしまいまし た。)
にぎえびすの3人は、いかにもなわかりやすい芝居をされるので、大和に恭順してい ても心までは許してないのよね。裏があるんだよねって観ているほうはわかります。 でもまっすぐな高麿は、納得して、問われるままに都での田村麻呂将軍の評判の話な どして、源太に勧められ自慢ののどで、御伽草子の「鈴鹿御前」のくだりを聞かせるのでした。
黒斑はこの前に去ってしまうのですが、青蛙は、拍手したりして源太たちに調子を合わせてます。
そんな様子を横目で見ながら、不本意ながらしょうがなく小さく拍手をする赤毛がけっこうツボでした(笑)

さて、この御伽草子の場面は何が素晴らしいって、藤森さんと、平野さんのダンスで す。いちおう、鈴鹿御前と田村丸(坂上田村麻呂)の化身みたいなものなのかしらと 思って見ているのですが、よくもあんな狭そうな台の上でそんなものすごいリフトを …いやほんと素晴らしいです。藤森さんはうっとりするほど美しいし、平野さんも上 半身がけっこう露出した衣裳で踊られますが、むちゃむちゃ素敵!すごい身体能力で す。平野さんが踊るのを見るたびに、若い頃の平澤さんみたい…って思っちゃうんで すが、平野さんもそんなに言うほどもう若くないですよね。すごいわ、ほんと。

ここで語られるお話としては、「鈴鹿御前は悪路王の仲間で、悪いことしようとしてたんだけど、退治しにきた田村丸に一目惚れしてしまった」ってことですね。
この場面、袖の長い衣裳で動きにくそう〜な鈴鹿御前の彩輝さんですが、歌はハスキーな低音でなかなか強い感じが出てますね。もと男役さんだもんね。
田村丸様はそんな鈴鹿御前のながーい袖をばしっとつかみ、くるくるくると引き寄せたり、またくるくるくるとほどいたり、大活躍です。もっと大活躍なのが平野さん。鈴鹿御前をえいっと肩の上にリフトして、しばらくキープ。けっこう長いと思う、この時間。その間ものすっごい真剣な目で彩輝さんのことを見つつ、そーっと降ろしてらっしゃいました。 しかし、その一部始終、平野さんに注目しているわたしって…って思ったりするけど…(笑)平野さんは踊ると顔つきまで変わり、男前度200%アップ。みなさん、この人とアラカオ、同一人物だってわかってる?(笑)

御伽草子が終わると、石のセットを若手さんたちが動かし、場面転換。赤毛たちの案内で、高麿の鉄の谷捜索活動の場面になります。こういう自然な場面転換うまいですよね。
高麿たちが何日探しても、鉄の谷はちっとも見つからない。ここで「この人全然だめじゃん!」って言われてしゅんとする赤毛・駒田さんがまたちょっとツボ(笑)

もう疲れたから寝る!と、お部屋で寝ている高麿。暗い中、不思議な雰囲気の子守唄が流れ、鬼が二人、そんな高麿の 回りをうごめき回ります。おどろおどろしく幻想的な雰囲気の場面。
この鬼二人は、暗いし面をつけてるしで誰なのか見えませんが、その動きからしてた ぶん、福永さんと武智さんだと思います。武智さんは、高麿のそばでひょい…っと逆立ちしてしばらく空中静止。この人のところだけきっと地球の重力が少ないに違いないわ(笑)

闇に眠る真実

鬼二人と入れ替わりのように、高麿の枕もとに、でんぐりかえりをしながら登場する 「謎の若者
出ましたっ、謎の若者!吉野さんです。
謎の若者は、高麿の書いた鬼の絵が気に入ったから、これをくれたらいいところに案 内してやると取引をもちかけます。二人のやりとりが楽しい場面です。
そのいいところとは、「鉄の谷」だと聞いて、快諾する高麿。謎の若者は、高麿をつ れて、鉄の谷に向かいます。
今から?と驚く高麿に対し、謎の若者「昼間じゃ人目につくよーぅ。江刺蝦夷の隠れ里に案内するんだから。」って返すのだけど、この「人目につくよーぅ」がなんともいいわ(笑) そしてからりと障子をあけて(実際には何もないけどそんな感じ)、外の様子をうかがう若者。ぽん!と外へ出て、「早く早く!」ってぴゅーって客席通路を走り去っていくのですね。森に住む小動物みたいな人だな(笑)
その後を「おーい待ってくれよー。そんなー、足の長さが違うんだからさー」とボケながら追いかけていく高麿。

幻想的な青い照明、夜の淡い光に照らされて、森の中、川をこえて進む二人(そういう風に見えるの)。謎の若者の歌で導かれていきます。若者の歌「闇に眠る真実」はぼわぼわにエコーがかかっていて、不思議な感じがして効果的。
想像力がかきたてられて、この場面好きです。圭吾さんの魅力あふれる場面だと思う。ちょっと「Dawn」を思い出しました。若手の人たちが木々だとか、岩だとかを表現してるんですよね。ここはみんな表情も豊かで楽しい。
この若手さんたちの中にいる中塚皓平さんですが、動きがものすごく美しいの。この場面で、謎の若者が木々とかになっている端っこにいる中塚さんをひょいっとつつくんですが、その動きに合わせてしなやかに流れるように体制を変えるのです。その美しさが尋常じゃない。目を奪われました。観劇も後半になると、その他の場面でも中塚さんチェックに走ってしまった。チェックするつもりがなくても目が行く(ただし平澤さんが出てない場面)。二幕の最初のソロダンス場面、面をとり袖に投げ、続いて二人側転のアクションがありますが、セットを動かしてるときとか、待機しているときとかも思わず見てしまいました(笑)
どこの場面だったかな。田丸さんと二人で、鹿の精霊をリフトして登場する場面がありましたね。どこだっけ?

さて鉄の谷の入り口に到着した二人。ここは達谷窟。この岩のむこうに鉄の谷がある。しかし、そこ に至るには、ありの巣のようになった迷路を通り抜けていかなければならない。その 道は江刺蝦夷にしかわからない。若者が入り口を開け(どういう仕組みになっているの?)、その洞窟に踏み出していくふたり。同じ「闇の中の真実」でも、だんだん重い雰囲気に。そろそろ鉄の谷につくかと思われるころ、高麿に背中を向けていた謎の若者 のオーラがガラリと変わります。今までの軽妙な口ぶりとは一転、重々しい口調で、 「本当にいいんですね?」「覚悟はありますね?」と念をおす若者。
「ここから先は地獄」みたいなことを急に言うんだけど、でも本当にいいもなにもあなた、そんな話聞いてませんってば〜。

鉄の谷への入り口は、高麿にとっては、真実への入り口。真実を知る覚悟はあるのかと若者は問うている。

そこに、高麿の気配に気づいて、探索にきた蝦夷たち(藤本さん、平野さん、武智さん)が現れ、高麿を捕らえていきます。
「騙したなーっ」と叫ぶ高麿が連れ去られていくと、ひとり残った謎の若者、悪魔的な表情を浮かべ高笑い。
とっても不気味ですけど、でも、ここで高笑いする若者の意図は?
静かに不気味に「にやり」のほうがこの謎の若者にあってるような気がする。
若者は、ここで高麿が捕らえられても殺されたりはしないとわかっていたと思うんで すけど、若者の目的からして、、、ここでなんで高笑いするの?にやりじゃわかりに くいから、わかりやすく、なんだか得体の知れない怖い雰囲気を出したかったのかな あ。もしかしたら無事(?)に蝦夷たちに高麿を引き合わせられたことへの満足の高 笑いなのかも。

エミシの戦い/信じなければ

さて、場面は、鉄の谷。セイ−ッショッ!!という力強いコーラスが流れ、蝦夷たちがそれぞれ刀を鍛えたり、 手入れをしたりしています。ここからは、わたしの視界が急激に狭くなり…見えている世界狭いです(笑)

オタケ(平澤さん)は、舞台にむかって左、下手側にいます。3人くらいいる中の真 中あたりだったかと。一緒にいるのはヤイラ(川本さん)と、キクリ(福永さん)。 長髪をポニーテールにし、ブルーを基調にした衣装。首にブルーのチョーカー(首 輪?(^^;)、Vネックというか胸をはだけた感じで、そのはだけた胸のあたり、 ちょっと汚れた感じ?で野生的でセクシー…!ノースリーブの上着の裾や袖ぐりには 毛皮がついています。背中にもちょっと毛皮がついています。右上腕には黒の腕輪 (でいいんですか?あれって)、左手首にはふさふさ(毛皮のリストバンドというべきか)。 髪をくくっている飾りもブルーです。
刀を構えてポーズをとる姿が、か、か、かっこいい…っ!!腕のしなりや、刀を握る指の美しさしなやかさ…(この段階で視線ロックオン!です。)

ヒトカ(藤本さん)、クスコ(武智さん)、アラカオ(平野さん)たちが捕らえて連れてきた高麿。大和が憎くてたまらないオタケは、ヒトカに「どういううもりだ。そのヤマトの首をはねろと言っただろう」と責めますが、ヒトカはオタケとは違う考えをもっており、蝦夷と大和が共存していく道はないかと思っているのです。ここで高麿を殺すと、大和に攻められることになる。ヒトカは大和とは戦いたくないし、高麿を殺してはいけないと長に言われている。
「お前ができないのなら俺がやってやる」とオタケは今にも高麿の首をはねようとしますが、ヒトカに止められます。長の命令だと言われればオタケもひきさがるしかない。この場面のヒトカ・藤本さんの声と台詞回し、なぜか市川染五郎さんを思い出してしまった。歌舞伎調なのかしら。

何をしにここまで来たのかとオタケに問われて高麿が「鉄の谷に案内してやるからと言われて」と言うもんだから、蝦夷たちは「俺たちの中に裏切り者が!?」「いったい誰だ!?」って騒ぎになるんですが、高麿が「ほら、あそこでにやにやしている…」って言っても、謎の若者の姿は高麿にしか見えていないらしい。
でもこのタイミングで謎の若者はほんとうに姿を隠してしまうので、他の人には見えてないって設定が予備知識のない初見の人にわかるのかなぁ?
ここで、謎の若者が高麿の言葉どおりにそのままいて、蝦夷たちが「どこだ?どこにそんなやつが」と言わせればわかりやすいのでは?と思うけど、ここで若者が姿を隠すことに何か深い意図があったんでしょうかね?
神出鬼没な雰囲気を出したかったのかな。

この「裏切り者は誰か」という議論は、ヒトカの「蝦夷は仲間を裏切ったりしない。たとえ自分の命をひきかえにしても」と言い切ったことできっぱりと終わります。いいの?それで?って思うけど、この鉄の谷にいる蝦夷たちはその程度でゆらぐ信頼関係じゃないってことなんだろう。それぞれが「こいつ(高麿)が嘘ついてんだろう」ってことにして納得したんでしょうね。

高麿に刀をつきつけ、「名は?」と聞くオタケ。「安倍高麿と申す」と答えようとして、オタケの「なんだその態度は」と言いはしないが、憎しみに燃える目と今にもザクッと動きそうな刀にびびって「も、申しまーす!!」と丁寧に言い直す高麿。
いやぁ、さぞ怖いでしょうね(笑)
もしかしたら何しに来たのかという話の前に名前を聞いたかもしれません。。どうも感覚が視覚に偏りぎみで、このへん記憶曖昧だ(笑)

とりあえずひきさがったオタケは、下手側の舞台前面の階段のところに腰をおろし、高麿と蝦夷たちの話を暗い目をして聞いています。ただじっと座っているだけなのに、その表情から目が離せない…
静かに怒りと憎しみを内に秘め、瞳に悲しみをにじませて。
高麿がヤマトとエミシが平和に暮らせる世の中を・・・と語るのに、オタケは「それじゃ見せてやろう。ヤマトが俺達に何をしたか」と、立ち上がります。
奥からアケシ(彩輝さん)が現れます。アケシはオタケの妹で、ヒトカの許婚。アケシの姿を認めると、ヒトカはそばにすっ飛んでいって付き添っている。アケシはヒトカにまったく口をきかないという。
オタケは高麿に聞かせます。妹のアケシが奴隷として大和に連れていかれ、田村麻呂の目にとまったこと、大和では「鈴鹿」と名づけられたこと。和議の使いとして戻ってきたときには盲目になっていたこと。そして、アケシの娘も大和は奪ったのだ。

ここから、超かっこいい剣舞の場面となります。
この場面は、蝦夷達が、捕らえた高麿に対して、大和が蝦夷に何をしたかその真実を語ってきかせるという場面ですが、歌とダンスと台詞で表現されます。これぞミュージカルの醍醐味。
「エミシの戦い」というこのナンバーで、蝦夷がなぜ大和と戦わねばならなかった か、その中でアテルイという王が生まれ、蝦夷たちはアテルイと共に戦い、アテルイがどうして死んでいったかが語られます。
平澤さんは…むちゃむちゃかっこいいです。平澤さんの見どころのひとつです。

オタケを中心とした蝦夷たちのの見せ場です。最初、縛られたままセンターにいる高麿の両側にオタケとヒトカが立ち、その周りを蝦夷たち(ここで謎の若者もさりげなく輪に入ります)がぐるぐる回りながら歌います。しばらく高麿を中心にして、回りで少し踊り、オタケが高麿の肩を押して高麿は下手前面の階段のところへ。ここから本格的に舞台中央でのダンスと歌に入ります。歌はオタケとヒトカが歌い、コーラスになり、剣を持ってのダンス。オタケは後ろの台の上にいたり、一緒に動いたり、ちょっと離れてたりいろいろですが、途中でセンターに入り、群舞となります。

「天翔ける風に」の志士ヤマガタを彷彿とさせます。けど、それよりももっともっとかっこいいです。 思わず呼吸も忘れ、まばたきも忘れ、見入ってしまい、身体は「平澤固め」にあいながら(笑)、心の中ではキャーキャー暴れそうになっている、、、とそういう感じでしょうか。

途中、オタケを頂点とした逆三角形のフォーメーションになって、蝦夷たちが後ろ を向いて右手に持った刀を背中にそわせ逆手に持って静止しているところがあり (かっこいい!)、そのとき、謎の若者がダンスというかアクションを入れながら、 前を横切っていってました。華やかです。
そのあと、蝦夷たちはこちらに向き直り、刀を構えてするどくポーズの連続、すっご いかっこいい!

オタケがセンターのポジションから、上手側にぱん!と横っ飛びして移り、そこでく るくるくるっとジャンプを決めて(きゃーかっこいい!)、それから上手端のほうにオタケを中心に蝦夷達が集まり、オタケは妹のアケシについて語ります。あれだけ激しく踊ったあとにこの長台詞、さぞしんどいだろうと思うのですが、そこは平澤さんですから。さすがです。それにちょっと息が乱れてるくらいが語られる内容にあってるかも。
ここで、アテルイがなぜ死んだのかが語られます。大和による侵略の結果、アケシは奴隷として連れていかれ、和議の使いとして戻ってきたときにはアケシの目からは光が失われていた。アケシはアテルイに、奴隷となった女子供、弱いものたちがどんな目にあっているかを訴え、アテルイはその話を聞いて、それ以上の抵抗をやめることにした。アケシの言葉に耳を傾け、田村麻呂を信じ、都に出向いたアテルイは、処刑され二度と帰ってはこなかった。 アケシは田村麻呂に見初められ、娘をもうけていた。アケシは田村麻呂と通じ大和に心を売っていた…。その結果、アテルイは田村麻呂の姦計に落ちたのだ。

オタケは静かな口調で語るのですが、怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ、やるせなさ、さまざまな感情がその瞳に、その表情に感じられ、やっぱりずっと目が離せないのでした。
途中から、他の蝦夷たちも一緒に語ります。
ここでの話をちゃんと頭に叩き込んでおくと、二幕に出てくるオタケの台詞「(アケシを)一度は許した。しかし二度の裏切りは許されない」が非常に説得力をもちます。(わたしは初見ではすっと結びつかなくて、二度の裏切り…ということは、一度目はなんだっけって一瞬思ってしまったんですけど。)

台詞が終わってから、もう一踊りと歌だったと思います。
最後は下手前面にいる高麿に向かって、蝦夷の誇りだけは奪われはしない!と歌って 終わりだったかと。

剣舞が終わった後、長のイサシコ(駒田さん)が現れて、高麿に取引(この鉄の谷の ことを黙っていてくれれば帰してやる)を持ちかけるのですが、高麿は命令にそむく ことはできない、国を裏切るなんて!と応じようとしません。ほんとにまっすぐな人 なんだよね、高麿って。イサシコが、大和が何を求めているか高麿に教え、結局大和 が目指す平和とは、大和だけのものだ。大和がこの鉄の谷、すなわち刀作りの技術を 手に入れれば蝦夷は皆殺しにされるか、この地を追われるだろうと語ります。 イサシコと蝦夷たちが高麿を囲んでさまざまに言い合っている間、謎の若者は、後ろ の台の上に座り、オタケは静かにその台の足元に座り込んで聞いています。 悲しい暗い目をして静かに座っているオタケから目が離せないわたし…。真ん中の芝 居をちゃんと観ろよって感じですが、、、みんなの話を聞いている謎の若者の後姿 (ちょっと横顔)と、うずくまるオタケの表情、なんだか美しい絵なのよ。。目が離 せないのよ。

オタケは「俺は反対だ。大和は信じられない」とイサシコに異をとなえるのですが、 イサシコは「アテルイは大和を信じて死んだけれども、アテルイの死は無駄ではな かったと俺は思っている。信じなければ何も変わらない」と諭します。そして「信じ なければ」という歌になります。
ここかな。オタケが背中をむけて(つまり謎の若者のほうに顔をむけて)語るとき、オタケの後姿と、オタケを見つめる謎の若者のなんともいえない表 情、これも美しく、好きな絵です。舞台の対角線にいるふたり(オタケが下手の舞台前面、謎の若者は台のところ)が一 直線になっている図です。 下手側の後ろブロック端席で見たときに、この図が綺麗だなぁ好きだなぁと思ったの だった。

オタケは、長の命令だからこの場はひきさがるが、納得のできない思いのまま、去っ ていきます。

縛られてひとりになった高麿のところに、謎の若者が現れてちょっかいをかけてきま す。若者と高麿が話していると、アケシがひとり現れ、見ていると、アケシの手には 小刀が。
殺される!?と思っておびえる高麿を、謎の若者は、アケシのほうへ突き飛ばすので あった。
小刀を振り下ろすアケシ。しかし、切れたのは、高麿を縛っていた縄だけ。 そう、アケシは、高麿の縄を切って鉄の谷から逃がしてやるのでした。アケシは田村 麻呂との間にもうけた姫のことを知りたかった。大和の人間である高麿が何かを知っ てるかと思ったが、高麿は何も知らず、しかし、高麿は「調べてやるし、自分の屋敷 に訪ねてこい。そうすれば田村麻呂とも会えるし、都では無理でもこのみちのくでな ら、一緒に暮らせるのではないか」とまで言うのであった。(そんなこと安請け合い していいのかい、高麿さん。。)

こうして高麿は、アケシに助けられ、謎の若者に送ってもらって無事に谷を出ること ができたのでした。
二人が去って行った後、1人その場に残ったアケシ。「信じなければ」の一節を歌い、暗転になる直前に「アテルイ…」とつぶやきます。

新しい世界

謎の若者の案内で無事、鉄の谷を逃れた高麿は、若者と一緒にみちのくの風景を眺め ます。
ここで目を細めて遠くを眺める若者。わたしの目にも目の前に広がるパノラマが見え るような気がしました。 高麿はここで若者に名前を聞くんですが、うまくはぐらかされて教えてもらえませ ん。
この場面で、高麿が「鉄の谷のことを報告して手柄にするのか」と若者に聞かれ、 「わたしは以前から夜中にねぼけてうろうろするくせがあって…夢を見ていたんだ な」と答えます。高麿の言葉を聞いて若者、満足そうにほのかに微笑む。そこがとて もいい感じで好きだなあ。
このほかにも高麿と若者の場面、若者の表情を見るのがなんだか楽しかったな。

若者にうながされ、風景を眺めた高麿は、あらためてみちのくの大地を身近に感じ、 心惹かれるものを感じ始める。
そして、この大地を守り、大和も蝦夷もともに、大和でも蝦夷でもなく生きていける 新しい世界がくればと夢を歌います。この「新しい世界」という歌はパンフレットに 歌詞が載っています。
坂元さんの歌声はほんとうにのびやかですね。ほんとこの高麿って役、ぴったりだと 思います。高麿の歌にあわせ謎の若者が途中から一緒に歌います。
そして歌の途中で若者がまず姿を消し(若者の前でセットが閉じて姿を消すので す)、若者がいなくなったことに気づいた高麿が去っていき、また若手さんたちが セットを動かし、そして薄暗い中に、蝦夷たちが登場します。深い山の中、姿を消 した高麿を探しているのだろうか。
蝦夷たち、コーラスしてました。蝦夷たちも去っていき、セッ トが閉じて一幕終わりです。

二幕へ


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