Dawn

-ドーン・夜明け-

●内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね!
●参考資料:パンフレット
●場面名は「犬の名前」(これはわたしが勝手に作りました)を除いてシアター・ドラマシティのロビーに掲示してあったものです。

ACT・1
打楽器の音とともに幕が上がると、たくましく美しい上半身をあらわにネイティブアメリカン(いわゆるインディアン)の扮装をした笠原竜司さんがセンターにひとり。薄暗い舞台、床は赤い照明が渦を巻いている感じの模様を描いています。笠原さんの頭には大きく長い羽飾り。両手に持った太鼓のバチのようなもの(そのものかも?)。この扮装がこれだけ似合う人は他にいないでしょう…。音楽始まるとともに床の照明も動き始め、笠原さんはゆっくりと力強く動きます。
下手側より、床をごろごろと転がって出てくる女性二人。川村絵良さんと長尾まやさん。彼女達がひとしきり踊ったあと、やはり下手側から飛び出してくる男性。平沢さんです。飛び、回り、風をおこし、音もなく(って感じなんです)空気を切り裂いて踊ります。短い時間ですが、印象的なダンス。
そして、福永吉洋さん、幸村吉也さん、福永敬洋さん、藤咲みどりさん、伊藤明賢さん、中田由記さん、奥山由美子さん、平野亙さんが次々と出てきては踊り、ぴゅんぴゅんアクションを決めては、去っていきます。ホントに風のよう。精霊のよう。途中でもう一度笠原さんも出て来られます。(笠原さんはGreat Spirit-大いなる精霊を体現した役とでも言うべきなのでしょうか。少年が何事かに直面するたびにスピリット・笠原さんは登場し、少年の心にささやきかけます。)
さて、奥山さん、平野さんのふたりがものすごいリフトを決めて、最後にセンターにひとり奥山さんを残し、左右からセットが閉じます。【Native Heart】
この場面は、何を意味するんだろうと不思議な感じでしたが、場面名が「ダイアンの部屋」とまとめられているところを見ると、うたたねをする彼女の夢、もしくは、彼女の心の奥深くの原風景みたいなものかなと思います。
1.ダイアンの部屋
閉じたセットが再び開くとそこは無機的なモノトーンのイメージの部屋。ニューヨークの高層ビルの12階。そこに住むダイアン(姿月あさと)はコンピューターミュージックの作曲家(シンガーソングライターだったかな?)。 出身はノースダコタ州。白人の父とネイティブの母を持つ。29歳、独身。好きな色は白、好きな言葉は「0」。
音楽に完璧を求め自分の世界を大切にするあまりに、人とのかかわりを避けるように、コンピューターだけを相手にほとんど部屋に引きこもりの生活。しかし仕事のほうはかつて大ヒットをとばしたものの、今はスランプに陥っている。【インダストリアル・テクノ】
うまく行ってない仕事の催促のメール、仕事仲間(ライバル?)からのメール。セラピストからの電話、みんなダイアンをいらいらさせるばかり。ノイローゼ気味になって12階の窓から飛び降りようとしたこともある。今もそう。何もかも嫌になって、窓から飛び降りて永遠の旅に出てしまおうか…。ダイアンは気持ちを歌います。【A Diane's Song/ダイアン】
そんなとき、1通のメールが届く。どうせまた…と思いつつ読み進むダイアン。それは不思議なメールだった。父なる空、母なる大地…なんとなくなつかしい音楽とともに届いた不思議なメッセージ。送り手はマハピヤ・ルタと名乗る少年。
少年は語ります。ダイアン、ずっとあなたを探していた。都会の暮らしに疲れたら帰っておいでよ、自然に。自然からの言葉を、全ての生き物からの言葉をあなたに伝えたい。人は誰もが永遠の旅に出る。その窓から飛び降りる前に聞いてほしい、僕の旅の話を…。
2.少年からのメッセージ
それはまだ肌寒い春の頃、母親が亡くなりひとりぼっちになった少年。ひとりで生きていける自信はあったけど、回りの大人達はそれを許さなかった。照明など灰色の雰囲気の場面です。グレーやベージュのスーツを着た大人達(福永吉洋、伊藤明賢、長尾まや)が現れて「君はここに住む権利がないんだ」「君と同じような子がたくさんいて、すぐにともだちもできるさ」「施設へ…」とマニュアル通りに少年を施設においやろうとする。【A Boring Song/コーラス】この場面では少年は実際にはいませんが、床にあたったグリーンのライトが少年(のいる場所)を表しています。
そんな少年の心にスピリット(笠原竜司)が現れささやく。「旅に出よ。命の意味、魂の意味を教わるのだ」と。その声に従い少年は大人達の目を盗んで逃げ出します。 リュックサックを手に駆け出してくる少年(姿月あさと)。
3.森へ
セットが開くと、真っ白い空間が現れます。舞台の後ろは上下左右いっぱいに白いスクリーンというか布?に覆われており、何の飾りもありません。ごちゃごちゃと窮屈な感じのするダイアンの部屋とは対照的です。さて、この白い布には、そこかしこにいくつもの裂け目があって、そこから精霊達が現れたり隠れたりします。後ろは足場のようなものが組まれているらしく、精霊達は、上のほうからも顔を出したりします。この白いスクリーンに場面ごとにいろんな映像が映し出され、雰囲気を変えてゆきます。他に舞台装置と言えるのは舞台後方にぐるりととりまく感じの、下手側から上手側に向って上がっているスロープ。このスロープは動きます。(初見のとき、ライオンキングを連想しました。)
内なる心、スピリットが導くままに森へ入っていく少年。少年の回りで女性達(精霊)が踊ります。【崩れゆく魂/少年、精霊】 自然に飛び込んでゆく少年を森の精霊達が迎えます。精霊達は少年にささやく。「待っていた…」と。 石原さんがスロープの上のほうから半身を出して歌います。みんな父なる空のもと母なる大地から生まれた兄弟。仲間とともにあれと。白いスクリーンに映し出される映像が綺麗です。【ミスティック・ダイアローグ/カスナ、精霊】 いつしか眠り込んでしまう少年。
4.朝の森
目覚めた少年を迎え入れる精霊達。好きな場面です。スクリーンのそこかしこからひとりづつ現れる精霊達は少年にささやきかけます。精霊のみなさんは、コミカルな動き、活き活きとした表情で、少年の回りを動き、踊ります。本当にそういう存在みたいです。自然の息吹を感じ、心が癒されるような気がする場面です。最初に少年に絡む幸村さんが印象的。あとわたしのチェックポイントは、少年の真後ろでダイナミックな開脚ジャンプをする笠原さん。精霊達はみんなそれぞれ活き活きと踊ります。【BREATH/少年】
すっかり森に受け入れられ、僕は逃げてきたんじゃない、この場所に帰ってきたんだと思う少年。のどが乾いたので水を飲もうとしますが、水筒の中は空。高台に上がって見てみると、湖が見える。(スクリーンに水面のような映像が映し出されます)
精霊達は、一瞬のうちに枝を伸ばす木々となり、岩となり、少年は彼らの間をかきわけ湖に向います。 (ここは、「あら、NODA MAPみたい」って思ったんだけど、野田さんファンの友人もやはり同じような感想を言ってました。「Right Eye」で同じような場面がありました。「ローリングストーン」もか。)
湖に着き、喉をうるおす少年は、そこに3頭の鹿の姿を見ます(3頭の鹿は、笠原さん、平野さん、幸村さん。パントマイムだけでなんとなく鹿に見えるんだなぁ)。【風と駆ける】3頭が寄り添っているところから、仲間かなぁ、家族かなぁ…と少年が見ていると、少し離れたところにまるで奇跡のような全身真っ白い鹿、スノーディア(奥山さん)が姿を現します。スノーディアはひとしきり踊ってまた奇跡のように姿を消します。幻?【ワカン・タンカ】
「ワカン・タンカ (Wakan Tanka)」とは、ネイティブ・アメリカンの「神」を現すラコタ語で、英語で言えば「The Great Spirit」(大いなる精霊)のこと。ネイティブの考え方では、空、大地、太陽、山、川、草、風、石ころ…この世の全てのものは、ワカン・タンカの魂を持ちます。

少年はスノーディアの姿に懐かしいものを感じ、ひとりきりの自分の姿と重ね合わせ、強く心ひかれます。 そして少年が森で迎える初めての夜。
5.夜の森
今夜の月は静寂。真っ暗な夜。(ほんとに暗い…)遠吠えの声におびえ、少年はラジオをつけて人とつながろうとしますが、うまく行かず。あきらめてひとりぼっちを意識した少年にスピリットはささやく。「心の目をとぎすませ」と。少年は心を静め回りの自然からいろんな声を聞きます。風にのって何かのささやきが聞こえる。まるでオーケストラのように。少年は歌います。【風のつぶやき/少年、精霊】
暗闇の中、上手袖の近く、暗めの紫の照明の中、そっとトランポリンが現れ、袖から飛んで出てくる人がひとり。幸村さんです。ぽん!くるくるくる!重力半分(^^;って感じですね。2回飛んで出てこられます。
そしてスクリーンには奥から涌き出てくる宝石かガラス片のような輝きが映し出され綺麗です。

ふと気がつくと、月が出ている。少年のところへも月の光が届いた。そして頭上は満天の星空。【満天の星/少年】スクリーンにグリーンを基調にした抽象的な映像が浮かび、その前には降りてきた星がきらきらと綺麗ですね。(うまく表現できなくてすみません)
そして少年は知ります。暗闇の中に取り残されて初めてわかったこと。どんな所にも命はある。暗闇だからこそ生きる命もあるのだと。スクリーンには細胞の顕微鏡写真か万華鏡のような(こんな表現でわかるとは思えないが…(^^;)映像が映し出され、男女4人づつの暗闇の生命達が踊ります。最初女性達が踊っていて、途中から男性達が現れ組んで踊ります。茶色っぽい衣装のところどころに銀の光物をつけ、頭にもキラキラした被り物。わたしの印象ではなんとなくひかりごけ?ダンスはやっぱりすごいです。東京では途中、少しの間少年がいなくなって、この暗闇の生命達が赤っぽい照明のなかで歌う場面があったのですが、大阪ではなくなってました。【暗闇の生命/少年、精霊】

奥のスロープをひとりでとぼとぼ歩く少年に、スピリットは「恐怖にたちむかえ」とささやきます。(笠原さんがスクリーンの左上のほうで半身を出してささやくのですが、ドラマシティではアートスフィアに比べて天井が低かったため、頭がライトに当たるんじゃないかと思っちゃいました(^^;)
そんな少年の背後に突然現れたのは、一匹の犬。平沢さんです。ホントに突然、スロープ途中のスクリーンの裂け目から現れるので、初見のとき、左上のほうの笠原さんに注目していたわたしは、平沢さんがいつどこから出てきたのかわからなかったくらい(笑)

さて、出会いの様子。ひとりぼっちのまま夜を迎えた少年は心細い気持ちでとぼとぼ歩いています。ふと気がつくと後ろでくんくん匂いをかぐものが。うわあ、いぬ!と驚く少年。さっきの遠吠えの主?と一瞬怯える少年ですが、犬は、間違えるのもほどがある!あれはコヨーテ。「俺は犬。」とニヒルに否定します。(なんか笑えるんですよね、この「犬」って言う台詞の間が。)犬が言っていることがわかったわけじゃないけど、少年は声が違うと納得します。
そんな少年をほっといてスロープからパン!と飛び降りた犬は、口笛を吹きながらうろちょろしています。なんかねぇ、おかしいんですよ。べつにたいしたことしてないのに、ちょっとした動きとか表情がおかしい。なんかホントに犬みたいだし。平沢さんってこういうセンス素晴らしい。好き〜っ(^^)
そしてひとりで寂しかった少年は、犬を追いかけてきていろいろ話しかけて、犬の素性(?)を聞いたりします。犬はいろいろ聞かれてめんどくさいので、「うるせえな。いろいろ聞くなよ。…噛むぞ!」とすごみますが、少年は「怖くないよ、君なんか!」と負けてません。でも、少年はひとりでいるのは怖い。犬は少年のそんな様子にほっとけないものを感じてしまいます。
なんだこいつは?と思いつつ、俺はひとりで生きている。生きることは孤独なこと。生きるために必要なのは孤独を知ることだと歌います。【ロンリー・ワン/犬、少年】しっぽを振りまわしながら歌うところ、CATSのラム・タム・タガーを思い出してしまいました。

さてお腹のすいている犬は少年の荷物に興味を示し、奪い取ってしきりに匂いをかいでます。(こういう動きとかホントに犬みたい。さすがだ(^^;)中に入っているのはビーフジャーキー。少年は何?あ、そうか。これがほしいんだねっと言いながらぽんと地面に投げてよこします。
犬としては手から渡してもらえるのかと思ってたのに、ちょっとプライドが傷ついた様子ですが、背に腹は替えられない。地面から拾ってぱんぱんとほこりを払い(^^;(リアクションはそのときによって違ってましたが)、ちょっと離れたところに行ったかと思ったら、急にがつがつ食べ始めます。 この場面はアドリブポイント。だんだんグレードアップしていきましたね。
が、しかし、ビーフジャーキーは固かった。ばたばた暴れつつ噛みきろうとする犬でしたが、結局噛みきられず。(文章で書くとどうってことないですが、ここは大笑いポイント)
「これ、固いよ!」と文句を言う犬ですが、少年はそんな犬の様子に「おいしいの?よかった。」とボケます。
そんなやりとりをしながら、少年は安心したのか、そのままころりと寝てしまいます。寝てしまった少年に犬はしょうがないなぁと思いつつそのまま側にいることにします。犬と少年のやりとりの間にも精霊がそこかしこから現れていたのですが、暗くなった舞台で精霊達は、少年と犬を見守ります。【ララバイ/精霊】

5’.犬の名前
朝になりました。犬はずっと少年のそばで守っていたのですが、少年が目覚める直前にちょっと離れて知らんぷりをしています。目覚めた少年は、近くに犬がいることに気づきます。
やっぱり僕と同じで行くところないんだ。あーそれとも…ビーフジャーキーほしいの?
少年の言葉に、やっぱりおなかがすいている犬はキラキラした目で駆け寄ろうとしますが(ここもホントに犬みたい)、すかさず少年「ないよ!」と大笑い。
犬、がっくし。
少年は気づきます。もしかして僕を守ってくれてたの?
そんな少年の言葉にニヒルに「それが俺達犬ってもんだよ。」とつぶやく犬。犬のサガってものですか。
犬は少年のことが気にいったんですね。人間ってやつは素直じゃないからな!だからこうして俺達が気を使ってやるわけだ。でもこういう関係も悪くないだろ?な?って犬は少年のまわりを回りながら言いつのりますが、少年は「お前、わんわんうるさいよ」とわかってない様子。

でもなんだかうれしくなった少年は、犬に名前がいる…と考えはじめます。
犬は気が気じゃありません。どうせならセンスのいい名前にしてくれよ。どう呼ばれようと俺は俺だけど、でもこれは、お前が俺をどう理解してるかってことなんだからな。などとぶつぶつ言いながら少年の周りを落ちつき無くうろうろ。なのに少年ったら
「くろ」
そのまんまだってば。
「ロッキー」
なんか、いまいち。
てな感じで犬は不満げです。(この場面も爆笑アドリブポイント。平沢さんの台詞も姿月さんの出方によって違ってましたね。)
少年は、犬があんまりわんわん言うので、「えーい!うるさい!」とキレてしまいます。「おすわり!」といわれ、素直にさっとおすわりをする犬。これも犬のサガなんでしょうかねぇ。大阪の千秋楽ではこのうえ「お手できる?」平沢さん、素直にお手してましたねぇ(^^;

さて、少年がふと気づくと、一本のパイン(松)の木が少年を誘うように(実際、誘っていました(^^;)立っています。(この木は、伊藤明賢さん、川村絵良さん、幸村吉也さんの三位一体の技。むちゃむちゃ高度な組体操って感じです。伊藤さんが他のふたりを身体の前後?上下?に乗っけてるというか、どう表現していいのかわからないのですけれど、とにかくすごいです。)
少年は犬に向って、この木、お前にちょっと似てる…と言い始めます。
細くって(木の3人もすらっとスマートに)、ひきしまってて(3人、ひきしまる)、ちょっとひねくれてて(3人、ひねくれる(^^;)…少年の言葉に反応して、形と表情を変えていく3人。最後のひねくれるところが一番面白いかな。幸村さんの表情がとくに見どころ(^^)。
どこが似てるねん(笑)って思いますが、とにかく少年はそのパインの木にちなんで犬の名前は「パインボーイ」と決めます。
うれしそうに「パインボーイだ!」と言う少年に、「似てねえよ!」と犬は納得いかないまでも、勝手にしな!と、その名を受け入れ、「ついてこい!パインボーイが森を案内してやるよ!」と森での暮らし方、自然との共生の大切さを歌います【森の案内役/パインボーイ、少年、精霊】。ロックする犬です(^^)かっこいい〜〜。最後の「Thank you!」千秋楽近くはここで、絶妙のタイミングで拍手が起こるようになってましたね。大阪の初日ではさすがに少なかったけど。

このパインボーイの歌が始まるときに下手側に天井から赤、緑、黄などの数枚ののれんかカーテンのような布が降りてきます。木の幹を表しているんだと思います。上のほうには葉が茂っている様子を表している深緑の布。パインボーイは木の実を手に入れるときはこうするんだ!ってその木をゆするしぐさをしますが、そのとき木の後ろから幸村さん達が黄色の実を投げます。いつも平沢さんにバシって当たってましたが、千秋楽はとくに気合が入っていたような(笑)

さて、少年は鷹の巣を見つけていました。ダイアンに向けて鷹の巣のひなのことを語る少年。木に丸い光が投影され、鷹の巣が表現されています。
鷹のひなについて思いを語る少年に対し「まったく甘っちょろいこと言ってるのは人間だけさ」とあきれながらも、パインボーイは空腹に耐えかねたのか、「腹、減った」とつぶやいて急に走り去っていきます。このぼそっと言って去るところも、なんか犬らしくて妙におかしい(^^)
ああ、ツボ(笑)
走り去りながらも途中でくるっと回転入ってたりします(^^)
6.メディスンマンとの出会い
少年は、鷹の巣のひなが育っていくのを見守りたいと思っていました。
そんなとき、一匹の山猫が獲物を狙って近寄ってきます。ひなを守ろうと親鳥の必死の抵抗もむなしく、親鳥は殺され、ひなたちも山猫の餌食となってしまいます。
山猫は平野亙さん、鷹が藤咲みどりさん。激しいダンスで戦いが表現されています。【標的】
あまりのことにショックを受けた少年の怒りと悲しみ。【慟哭/少年】木の影から現れた精霊(長尾まや、福永たかひろ)が踊ります。スロープの上には、スピリット笠原さんを中心に精霊達が「それが自然の掟」と少年に語りかけます。少年はいつも守ってくれた自分の母のことを思い出します。
そしてダイアンからのメッセージ。ダイアンは自分もマハピヤ・ルタと同じ境遇だと語ります。15歳のときに母と弟を捨てて家を出てきた。ふるさとに帰り自分が捨ててきたものたちに会うのは怖い、と。帰る場所のない、ひとりぼっち。

そんな少年に山猫が襲いかかろうとしますが、あわやというときに、猟銃を持った男性が現れ少年を救います。それがカスナ(石原慎一)、心と身体を癒す力を持ったメディスンマン。
カスナの登場とともに下手側の布が精霊達によって取り去られるとそこに立っているのはパインボーイ。パインボーイがカスナと少年の出会いを語ります。(そういえば、パインボーイ、説明台詞多いです。)
カスナは少年の傷の手当てをし、少年に「マハピヤ・ルタ」という名前をつけ、小さな小屋を与えます。
鷹が山猫の餌食となったことにショックと怒りを感じている少年に、カスナは自然の掟を受けいれるんだと諭し、命は環となってめぐるのだと歌います。【生命の環/カスナ、少年】
カスナが歌い、精霊達が環を両手に持ってあちこちから現れ踊ります。ナンバーの最初、パインボーイはスロープの上のほうで寝転んでいます。ちょうどその近くに現れるのが長尾まやさん。ここ、長尾さんが踊りながら、寝転んでいるパインボーイの足に環をひっかけたり、パインボーイが環を受けとって身体を通したりちょっと踊ったり、楽しそうなんですよねー。

弱いものが強いものの犠牲になるのではなく、ひとつの命は次の命の糧となるのだというカスナの教え。カスナが語る間、精霊達はあちこちにうずくまり、思い思いのポーズをとっています。パインボーイはスロープを降りてきて、下手側の端のほうにいる平野さんの側に座って平野さんに絡みます。このとき平野さんは植物なのかなと思うんですけど、ゆっくりとした動きにパインボーイが翻弄されたり、上半身を床にふせた平野さんの背中にパインボーイが乗ってたり、楽しいので、いつもどうしても目がそっちに(^^;。
そうこうしているうちにパーカッションの音が効果的なナンバーが始まり、パインボーイはゆっくり立ち上がってセンターに来て、鮮やかなジャンプを決めます。カッコイイッ! 少年とパインボーイを中心とするダンスナンバー。よく見たら後ろのほうで、カスナも少し踊っているのですね。平沢さんが踊っているとなかなか回りが冷静に見えないわたし。気づいたのはほとんど最後の観劇の頃でした。みんなと一緒に両手を上げてくるくるくるくると回っておられました。
この場面もとっても好きです。平沢さんが踊りまくる数少ない場面なのでそれはもちろんなのですが、精霊のみなさんの、あなたたち重力ないんちゃう?って感じのアクションにもただただ圧倒されていました。風みたいですね、ホント。また活き活きと踊られるので見ていてホントに楽しい。ここでのわたしのチェックポイントのひとつは、群舞の途中でセンターに集まった精霊達、パインボーイはその側を通って後ろに行きますが、笠原さんが高く上げた左手にパインボーイはジャンプしてタッチ。このときの笠原さんの満面の笑顔(^^)
パインボーイはひとしきり踊ったあと、曲の途中でスロープの上のカスナの元に行きますが、大阪の千秋楽では楽しそうにカスナと遊んでました。【スピリチュアル・エナジー/少年、精霊】

精霊達がはけていくと、どこからか銃声が聞こえます。町から白人達が狩に来ている。彼らは森の貴重な生き物を殺し、戦利品を町に持って帰る。鹿の角も…。パインボーイはつぶやいて去っていきます。(様子を見に行ったんだろうか。)少年は不安にとらわれます。スノーディアは大丈夫だろうか。
少年の幻想の中で、銃を持ったハンターが二人現れ、もうひとりのハンターがスノーディアをとらえる場面がダンスで表現されます。このハンターは伊藤さんかな?(このハンターさんたち、前場面からすごい早替わりだなぁ。)【幻影の鹿】 スノーディアが捕らえられる幻想に、少年は「やめて!」と叫びます。そしてスノーディアに対し、「君はひとりじゃないよ!君を思っている人がいるから」と訴えます。暗い空に稲妻が光る。
少年がひとりたたずむ暗い舞台にデジタルな雰囲気の映像と音が重なり幕が降ります。ちょっと不思議な幕切れです。
ACT・2へ。

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