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砂の戦士たち




●ミュージカルナンバーごとの内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね!
●参考資料:パンフレット、「砂の戦士たち」(著:ジョルジェ・アマード、訳:阿部孝次、発行:彩流社)、「ミュージカル12月号」(No.227、2003年12月、発行:株式会社ミュージカル出版社)

一幕のつづき

さよならのサンバ (曲:斉藤恒芳)


アルミロ、グリンゴがまたまたアクションを決めながら登場し、続いてボアも同じように飛びながら現れます。
ボアが歌い、少年たちみんなが踊る明るく楽しい曲。すさんだ暮らしの中にも楽しみを見出しはしゃぐ砂の戦士たち、少年たちのそういう雰囲気を表しているのかなって思います。平沢さんの振付です。

歌うボアを囲んで円になってまわりでくるくる回りながら踊ったり、いくつかのグループでいろんな振りを踊ったりひとつになったり、フォーメーションをさまざまに変えながら少年達全員でリズミカルに踊るナンバー。石川さんも横田さんもバリバリ踊って(踊らされて?)います(^^)
平沢さんの隣で踊っている横田さん、ダンスは……で(^^;すぐに後ろに抜けちゃうんだけど、なんだかとっても楽しそうで、わたしここの横田さん大好きなんです。
この場面で、今回話題の平沢さんのバック転が披露されます。福永さんが手で支えをし、勢いをつけ平沢さんが後ろむきに宙に飛ぶ、高い高いバック転です。ほんと気持ちいいくらいぴゅん!って飛びます。よい子はけして真似をしないように…ってできませんってば(笑)
ラストは舞台前面の上手端に全員集まってポーズ。自然と大きな拍手が起こりますよね。

父 ライムンド (曲:斉藤恒芳)

パネルが出てきて場面は変わり、少年たちはペドロ、ボア、ジョアン、ボルタ、ガト、センイを残して去ります。 これからセンイは、例のボアが見つけてきた金持ちの家に入りこんで金目のもののありかを探ってくるという仕事に出かけていきます。「なんといっても俺の演技力にかかってるんだからな!」と言ってはしゃぐセンイ。ボルタやガトは「いい暮らしができるのがうれしいんじゃないのか?」と冷たい目を向けますが、センイは、金持ちたちが自分を哀れんで家に入れ、いずれ襲撃されてがっかりする顔を早く見たいと思っていて、テンション高くはりきってセンイは出かけていきます。

【余談:原作ではセンイ・ぺルナスはいつもこういう役割(偵察)を担っています。足が不自由なことで誰よりも人々の同情をひくことができる。このことで砂の戦士たちの中でたちまち頭角を現したとなっています。センイは幼い頃にうけた虐待で心は大人たちに対する憎しみでいっぱいになっており、彼に同情しあわれんで宿を提供したお金持ちが、いずれ彼が手引きした襲撃を受けたあと自分をあしざまに罵る場面を考えると喜びを感じる…というような屈折した心の持ち主。しかし愛されたことのない彼は、誰かに愛されたい、認められたいという気持ちを抱き、傷つきやすい繊細な心をも持っています。】

ボルタとガトが去り、最初からこの計画に反対していたジョアンは冷静に「俺もセンイは帰ってこないんじゃないかと思う」と言いますが、ペドロは「いや、センイは必ず帰ってくる!」と言いきります。あいつが仲間を裏切るわけがないと。

ペドロの後ろのパネルに海を背景にする人影のような映像が映し出され、ペドロが自分の父親について語り、歌います。ジョアン、ペドロ、ボアの3人で歌う力強い歌です。
ペドロの父ライムンドは、波止場で労働者の権利を守るためにストをし、制圧しようとした騎兵隊に撃たれて死んだ。ペドロはいずれ自分も父のように革命家になり、権利を守るために闘いたいと歌います。

金持ちの息子 (曲:斉藤恒芳)

誰もいなくなった静かな舞台。センイが紙袋を抱えてひとり下手から現れます。後ろを振り返りなんとなく寂しげに、舞台を横切って歩いて去っていきます。

少年たちの住み家。ボアがギター、ピルリトがビリンバウ、エンリケが太鼓を演奏しています。グリンゴたちが「さっき市場でセンイに会ったんだよ」って話を始めます。センイはなんとカシミアの服を着ていたという。ボアが、センイは金持ちの家に入りこんで金目のもののありかを探ってくるという仕事をしていることを告げると、「それでこのごろ姿見なかったんだぁ」と無邪気にバランダン(縄田さん)。

でもセンイはもう8日間も戻らない。「もうあいつは帰ってこないよ。金持ちの暮らしを味わったらこんなところに帰ってくるかよ」とボルタ。疑心暗鬼になる少年たち。
センイは金持ちの息子になって、いい服を着て、優しくされ、自転車も買ってもらってこんないい暮らしをしているとバランダン、グリンゴ、アルミロ、エンリケ、ガトたちが歌い踊ります。
プロフェソールまでが「そうだよな、いい暮らしをしたら帰ってこないかも…」と言い出してペドロは怒ります。 「センイは必ず帰ってくる!」

このあと、センイは帰ってきます。
「待たせたな!」と元気に入ってくるセンイ。グリンゴたちに果物の入った紙袋を渡して、「おい、誰かタバコ持ってないか!?1週間も禁煙してたんだ。金持ちのぼんぼんがたばこふかしてるわけにいかないからな!」
なんとなく呆然とした様子でジョアンがセンイに吸っていたたばこを手渡します。センイは受けとってすぱすぱと吹かしています。
センイは、ボルタたちに「おい、カシミヤの服はどうしたんだ?まさか手ぶらで帰ってきたわけじゃないだろうな?」「8日間もお前がいいものを食っている間、俺達はろくなもの食ってなかったんだぞ!」と口々に責められます。「あのまま金持ちの家にいたかったんじゃないのか?」と責められ、「だったらどうだっていうんだよ!?」と反抗的な態度をとり、ボルタにつきとばされて床に倒れるセンイ。あお向けに転がったまま、黙って天井を見つめ、たばこをふかしています。

ペドロがセンイのポケットを探り、図面を見つけ出します。家の図面でどこに金製品があるか、逃げ道なども調べて記してある。ペドロは「図面はここにある。センイはちゃんと仕事をしたんだ!」と少年たちを黙らせ、センイとサシで話がしたいと言ってみんなを去らせます。その間にセンイは黙って起きあがって、上手の袖のところへ行ってタバコを消します。

ペドロは「みんな悪気はないんだ」とセンイを慰めますが、センイは別のことに気をとられている。
台に座って背を向けて図面を見ているペドロに言いたいことがあるのだが、言えずに「いつ襲撃するんだ?」と質問をするセンイ。
「すぐにだ」というペドロの答え。
センイは、思いつめた様子で「なぁ、今回やめにしないか?」
驚いたペドロがセンイを見て「それはできない。」
「でも…」「言っただろう。"でも"はなしだ。」
センイは目をふせてぽつんとひとこと「エステル夫人、いい人なんだ…」

そんなセンイをじっと見ていたペドロは、とつぜん明るく「俺達は、いつも食うか食われるかだ〜!」と言いながらセンイにふざけて絡んでいきます。センイもちょっと笑ってペドロにぎゅうっと倒されるままになっている。そのままセンイに手を触れたままペドロは優しく囁きます。
「誰も傷つけない。誰が盗んだのかもわからないようにやる。」
目をふせたまま黙ってうなづくセンイ。
(ここのやりとり…ぬれそぼった子犬のようなセンイが可愛くてたまらない。。。)

おふくろの匂い (曲:斉藤恒芳)

ペドロが去って行き、センイのソロ場面です。
あいつらの言うとおりなんだ。ずっとあの家にいたかった。
いいものを食べさせてくれたからじゃない、いい服を着せてくれたからじゃない。
エステル夫人が優しく愛情を注いでくれたから。
今まで哀れみしか受けたことがなかったのに、夫人は抱きしめてキスしてくれた。
あの人の暖かいぬくもり。これがおふくろの匂いなのか…
でもみんな夢なんだ…

切ないセンイのソロが終わってセンイが上手の台にごろんと横になると…舞台は劇団へ。

俺たちはどこへ流れてゆくのか (曲:高橋 城)

台の上に横になっている保川のところへ、保川の稽古着(例の派手なやつです)を持ってくる木村。保川に稽古着を渡しながら(実際は投げていますが)「神山さんで大丈夫なんだろうか」と木村は話しかけます。保川は着替えながら淡々と「じゃあ、木村さんやっちゃえば」

別の場所。名前を覚えない黒藤と守島。黒藤は客演のことについて疑問を持っている。いくら役にぴったりだからって劇団の大切な追悼公演に客演を呼んでぽんといい役とられてもいいのか?と守島に問い掛けます。生真面目な守島は「このピルリトという役だけは誰にも渡しません!」
会計係だとかで利用されるだけならやめさせてもらいます!と怒りながら守島は去ってしまいます。「あ、お怒り?」とあっけにとられて見送る黒藤。

また別の場所。なぜかジャージのおなかからノートパソコンを取り出す井坂。なんとなくこそこそとパソコンを操作する。鉄アレイを持って筋トレをしながら睦田が現れる。「井坂さん、原作読みましたか?神山さんが読んどけって言ってましたよ」と「砂の戦士たち」の原作本を渡す睦田。「そんなの、読みました。感動しましたって言っとけばいいんだよ」とめんどくさそうに答える井坂に、「ガトの役作りに役立つんじゃないですか。」と言いながらサンバを踊るポーズをとる睦田。(ここちょっとツボ。鉄アレイを頭の上に持ち上げてポーズとるんですよ。そんなことあっさりやらないで〜坂元さん(笑))

パソコンから目を離さない井坂に睦田は「振付考えてるんですか?」
はっとして画面を隠す井坂。「言うなよ!ドラマのオーディションがあるんだ。そのプロフィール」
井坂はTVに出ないかと誘われていて、劇団をやめようかと思っている。
睦田まで「そうかぁ。俺も考えようかなぁ。」

劇団員はそれぞれ迷いを抱え、自分たちの行く末について思い歌う。

研究生達。炊事係の関口はエプロン姿になべを抱えて登場。衣裳係の竹林はみんなの衣裳を繕っている。小道具係の広瀬は何もしていない(笑)…じゃなくて、パンを片手に、自分にとってカレーは飲み物だから一杯じゃ食べたことにならないから、もう一杯くれと関口に訴えている。洗濯物が入った籠を抱えて河原が現れるなり「どうして俺が部屋を回って洗濯物を集めなくちゃいけないんだ〜〜っ!!」と怒って洗濯籠を投げてます。河原キレてます。竹林は役者としての才能はないから、裁縫の才能でみんなに貢献しているなんて言うし、研究生だからしょうがないんだよと言われても、こんなことしてて何を研究しろって言うんだ〜っとますますキレる河原。研究生なのに何もしない広瀬に対して「小道具係なら洗濯機の一台でも作ってみろ〜っ!」って責めますが、そんなもの作れるようならこんなとこにはいないよ〜とのんびり答える広瀬。この人もいい味出してますね(^^;ぴちぴちジャージだの、どらえもんだの責められても全然こたえていないようす。

ひとしきり怒って我に返る河原。お前たちに怒ってもしょうがないんだよな。研究生たちもそれぞれ悩みと迷いを抱えて、自分たちの行く末を不安に思っています。

河原は四国の実家の修理工場が不況でうまくいってなくて、毎晩親から電話がかかってくる。今まで家にお金も入れたことがないし、親は河原が役者をやっていることをよく思っていない。 反対に関口は実家に住んでて親も役者をやることに大賛成なんだけど、息子に過大な期待をかけていて「大河ドラマにはいつ出るんだ?」って毎日のように聞かれるという…。それも辛いよなぁ。まさかエプロン姿でカレー作ってるとは思いもよらないだろうに。

うしろで寺田がモップかけをしながら彼らの話を聞くともなしに聞いています。
寺田はここの人達のことを知れば知るほど、迷ってばかりいる彼らに失望していっていた…

メリーゴーランド (曲:YANCY)

パネルが出てきて、舞台はブラジルへ。パネルに映し出される色とりどりの木馬の映像。メリーゴーラウンド。ここはぱあっと明るい楽しい気分になりますね(^^)
パネルの前にガト、ジョアン、ボア、ピルリトが現れ、ガトが歌い踊ります。
ガトとジョアンがメリーゴーラウンドの仕事を任されたのだ。今夜の営業が終わったあと、みんなをメリーゴーラウンドに乗せてやるよ!と明るく言うガト。
ガトが歌い踊っている間に、ジョアンは何か気になることがあるらしくさりげなく姿を隠してしまうのだけど、ボアとピルリトは楽しそうに一緒に踊ります。(坂元さんが川本さんをリフトしてました。)
途中からプロフェソールが現れ、やはり目を輝かして見つめています。

もっと近くで見ようぜ!と言ってガト、ボア、ピルリトが去ったあと、プロフェソールはひとりで絵を描き始めますが、そこへそーっと現れたジョアン。回りをうかがいながらパネルの向こうにいる誰かを呼び寄せます。その誰か、帽子を目深にかぶっていて顔は見えない。そしてジョアンはプロフェソールに近寄り、なぜかシガレットケースをかちゃんかちゃんと何度も落とすのでした。なにやってんの?って不審な目でジョアンをしばらく見ているプロフェソールですが、妙なジョアンの様子に「何か相談か?」と声をかけます。
ジョアンは、「天然痘で両親を亡くしてひとりぼっちになった子がいて、その子を砂の戦士たちに加えたい」と言うのですが、何か煮え切らない。ちょっと問題が…考えようによっちゃセンイよりたちが悪いかも…。

でもとにかく会ってみてくれとジョアンが言うので、いったいどんな子だよ?と不審に思いつつ会ってみれば、顔をふせてて声も出さないけど、見たところ普通の子じゃないか?いったい…と近寄ってみてプロフェソールは気付きます。
「君、女の子か!」
「ちっ違うよ!」と慌てて隠すジョアンですが、「そんなの隠したってすぐばれるぞ!」とプロフェソール。そうだよな…と観念するジョアン。
とにかく砂の戦士たちに加わるにはペドロの許可がいる。まずはペドロに相談することだということになり、彼女を連れてジョアンは立ち去ります。

入れ替わりにピルリトがやってきます。ピルリトはジョゼ神父の導きで今は靴磨きをして働いています。盗みで暮らしていくことをやめたのだ。そのことを目を輝かしてプロフェソールに語るピルリト。

逃走のダンス (曲:斉藤恒芳)

ピルリトとプロフェソールが話していると、「警察だ!逃げろ!」と叫ぶペドロ。逃げまどう少年達。ここはドーラが登場する場面だが、ドーラ役の千島(伊織さん)がいないので竹林の代役で稽古をしているという設定。しかし竹林がガト役の井坂にぶつかってしまい、稽古は中断。まったくいいかげん覚えろよ!と井坂に責められ平謝りの竹林。千島がいないせいで稽古も本調子にならないため、いいかげんうんざりしている劇団員達。「千島が来るまでここから先やめにしませんか。」などと保川が言い出し、ここから先ってじゃあ2幕全部できないじゃないか!と雰囲気がとげとげしくなってくる。しょうがない、5分休憩と神山が言った矢先に、やっと千島が来ます。じゃ、少しでも時間を無駄にはできない、休憩はやめて千島を加えて稽古再開。
さっきのピルリトとプロフェソールの場面から、また砂の戦士たちの世界に戻ります。

「逃走のダンス」というだけあって、逃げまどう少年達の様子がダンスでうまく表現されます。川崎悦子さんの振付。少年達は走る走る走る、セットのパネルを動かして形を変え、入り組んだ町並みを走りぬける様子が表現されます。随所にアクションもちりばめられた見応えあるダンス場面です。ドーラもジョアン、プロフェソールと一緒に逃げていて、最後にはドーラの道案内でなんとか無事に逃げおおせることができた少年達。みんな息もたえだえに倒れこみます。みんな無事か〜と確認してみたら人数はあっているはずなのにペドロがいない!

ドーラの危機 (曲:斉藤恒芳)

そこでドーラが見つかってしまいます。センイの「おい、こいつ女じゃないか!」の声に色めき立つ少年達。ジョアンとプロフェソールは慌ててドーラのことを、「両親を亡くしてとつぜんひとりで放り出されたんだ、行くところがないんだ。」とみんなに説明しようとしますが、興奮している少年達は聞く耳を持っていない。
「可哀想だよ!」と幼いアルミロが訴えますが、センイに「だったらお前が一緒に死んでやれよ。なんなら俺が送ってやろうか!」と怒鳴りつけられます。

「堅物のふたりにしちゃあ気の利いた贈り物じゃないか」と、女好きのガトがさっそく手を出そうとドーラを抱き寄せますが、思わずガトを殴り飛ばすドーラ。ガトは派手にぶったおれて「痛ってぇぇぇぇ…」と叫びつつしばらくそのままでいますが、起きあがるとなぜかおもむろに上着を脱いでタンクトップ姿になり、長い髪を束ねていたのをほどき、どこかから棒まで取り出し、全身に怒りをみなぎらせ…(ガト、こわい…(^^;)

そして「女のくせに先に手を出した。こんなことを見過ごしちゃ砂の戦士たちの名折れだ」と言い出すボルタ。
ドーラをかばい守ろうとするジョアンとプロフェソール。ジョアンはナイフを取り出し、「近づいた最初のやつを殺す」と叫びます。
じりじりと歩み寄り、ガトとボルタがジョアンとプロフェソールに殴りかかる瞬間に、幕が降ります。
これで1幕は終わりです。

二幕へ


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