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砂の戦士たち




●ミュージカルナンバーごとの内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね!
●参考資料:パンフレット、「砂の戦士たち」(著:ジョルジェ・アマード、訳:阿部孝次、発行:彩流社)、「ミュージカル12月号」(No.227、2003年12月、発行:株式会社ミュージカル出版社)

二幕

ドーラの危機 (曲:斉藤恒芳)

幕があがるとストップモーションな少年たち。1幕から続いています。動きが入ると一瞬にして乱闘に。殴りかかるガト(吉野さん)とボルタ(駒田さん)。ドーラ(伊織さん)をかばうジョアン(本間さん)とプロフェソール(横田さん)。回りで興奮する少年たち。ガト&ボルタVSジョアン&プロフェソールの闘いのはずが、入り乱れてむちゃくちゃな状態に。倒れたガトにどさくさに紛れてセンイ(平沢さん)が殴りかかっていたし(前に殴れなかったのを遺恨に思っていたのか(^^;)
収拾がつかなくなったところに、ペドロ(石川さん)が現れて一喝。「誰が説明しろ!」
少年達は誰も説明できない。口を開いたのはドーラ。「あたしが悪いの!先に手を出したから…」
結局ペドロが場をまとめ、少年たちを去らせる。ペドロとドーラ、ジョアン、プロフェソール、ボア(坂元さん)だけが残る。
ペドロは明日ドーラには出ていってもらうと告げますが、ドーラは出て行きたくない。「嫌だ!あたしはここにいる!ここにいてあんたたちを助ける!料理も裁縫も洗濯もできる。それに……!」何を言おうとしているのかわかったペドロは「怖がらなくていい。誰もあんたに触らせない」と告げて去っていこうとします。
「ありがとう」いうドーラにペドロは「礼ならそいつらに言うんだな」(かっこいい〜)

漂う小瓶のように (曲:斉藤恒芳)

砂の戦士たちに加わることができたドーラのソロ。途中から劇団の場面となり、千島(伊織さん)がひとりで踊りの練習をしている。「ちょっといいかな。」と話し掛けてくる寺田(横田さん)。寺田は、千島はただの客演ではなくて、元劇団員だと知って不思議に思っている。彼女があまり居心地よさそうに見えないから。
千島は今はTVに出たりして、タレントとして成功している。転機を迎えたとき、亡くなった前の主宰である東(あずま)に相談し、背中を押してもらったおかげで今の自分がある。
今回、この舞台を上演するにあたって神山(石川さん)に呼ばれ、ひさびさにかつての仲間たちと一緒に劇団の芝居に出ることになった。人付き合いが苦手で劇団にいる頃からひとり浮いていた千島だが、今回また仲間たちと一緒に仕事ができることを本当はうれしく思っている。しかし彼女もまた神山のやることにいまひとつしっくり来ていない様子。

この合宿にどんな意味があるのか疑問に思う劇団員たち。みんな疲れてきている。こんな合宿はやめようと神山に意見してくれと劇団員たちに頼まれる木村(本間さん)。
相変わらず人の名前を覚えない黒藤(駒田さん)は、なぜか河原(幸村さん)の洗濯当番を手伝いたいとしつこく言いつづけている。「ひとりで大丈夫ですよ、タケ(竹林:阿部さん)も手伝ってくれますから!」と断る河原だが、黒藤はしつこい。そこへ千島が河原に「洗濯機空いたら使いたいから教えてね」と言ってくる。チャンス!とばかり黒藤は千島に「俺が手伝ってやる!」と言いますが、「自分のことは自分でしますから」と断られます。そうか…と途端に、河原に「当番がんばれな!」と態度豹変する黒藤。つまり千島の洗濯物に興味があったわけですな。「もう、わっかりやすい人だなぁ」と河原にもあきれられるのでした。
(ここでは会話をしながら、劇団員たちは(全員じゃないですが)衣裳に着替えます。人によってはジャージの下に砂の戦士たちの衣裳であるペイントされたGパンを穿いている人もいれば、ジャージを脱いでGパンに穿きかえる人もいます。ちなみに下には黒の膝上丈のスパッツを穿いてらっしゃいました。最初から衣裳で登場する人もいるし、全然現れない人もいます。保川・平沢さんは登場しません。)
そんな黒藤は相変わらずニンニクを食べていて、「うっ臭い!」と千島に責められます。
場面はそのまま「砂の戦士たち」へ。

ドーラ・母・妹・恋人 (曲:YANCY)

すっかり砂の戦士たちになじんだドーラだが、みんなでいるとき何か臭い匂いがして…?これは何?はた!と気付くドーラ。「あなたたち臭い!」
臭いのは着たきりの少年達の衣服なのでした。いままで意識してなかったけど、あらためてお互いの匂いをかぐと…臭い(笑)お前のほうがくさい!とどんぐりの背比べ状態で騒ぐ少年達にドーラが「ほら、これ!」と高らかに掲げるものは石鹸。「おお、いい匂いだ!」「これ、どうしたの?」と喜んで集まって騒ぐ少年達にドーラはあっさりと「盗んだの!」。 驚く少年たちだが、ドーラは意に介さず。あたしだって砂の戦士たちの一員なんだから!
ド−ラに言われて、少年達は汚れて臭い服を脱ぎ、ドーラに洗濯してもらう。
ここで上着だけじゃなくTシャツまで脱いでセミヌードを披露(?)するのは、エンリケ(阿部さん)、バランダン(縄田さん)、アルミロ(幸村さん)、グリンゴ(福永さん)、ピルリト(川本さん)、センイ(平沢さん)です。ここは若い子たちにまじってセンイ・平沢さんが入っているのがポイントです(笑)。
上着を使った明るく楽しい歌とダンス。ほんと楽しい場面ですよね、ここ。少年たちはドーラといることに喜びと幸せを感じ、ドーラが来てから少年達の生活は変わった。少年達にとってドーラは、母であり、妹であり、恋人であった。最後はみんなでラインダンス。このラインダンスに参加してないのは、次の場面ですぐ出てくる4人です。

仲間 (曲:高橋 城)

パネルが動くことによって場面変わって劇団。振付をする井坂(吉野さん)、振付を受ける黒藤、保川(平沢さん)、竹林。振りの最後は「女豹のポーズ」だが黒藤は適当にやっていて、それは「生まれたての小鹿」と井坂に指摘されます。
神山がやってくる。河原が急遽実家に帰らなきゃならなくなったため合宿を抜けることになったという。河原本人は本番までには帰ってきたいと思っているが、状況次第ではわからない。とにかく連絡入れます!と言って去って行く河原に「これ、帰りのフェリーで食べて」と自分のパンを渡す広瀬(福永さん)(笑)

河原がもし帰ってこれなかった場合、アルミロの代役はどうするのか?稽古は竹林の代役で進めることになるが、「タケじゃ稽古になりません!」と保川のきつい一言。黒藤が保川に「おい、そんな正直なこと言うなよ」と言いますが、みんな口には出さなくても同じ気持ちのようだ。
劇団員の中に本当にこの舞台の幕は開くのか?という疑問が湧き上がってくる。
合宿に疑問を持つ劇団員を代表して木村が神山に、この合宿にどういう意味があるのかもう一度問いただして、神山がそうすることで本当の仲間になれるんじゃないかと考えたからだと答えます。
仲間?自分がボスになりたかっただけじゃないのか?神山を信じられない木村や井坂が合宿を抜けていくが、保川は去らない。だけど、保川はこの舞台が終わったら役者をやめようと思っていると語ります。10年もやってれば自分に才能があるかどうかくらいわかると。保川は前主宰の東に心酔して役者をめざした。東がいなくなって最後にもういちど自分がどこまでできるか試してみたかったと言う。「だけどもう試す場所がないじゃないですか。」と冷めた口調で言う保川に、「いや、この舞台の幕は必ず開ける!」と神山は告げます。

黙って聞いていた千島は、途中で走り去っていきますが、息をきらせて戻ってきて言うには「事務所とも相談しました。この合宿から撮影に通います!」
劇団員がみんな去ったあと、千島が一人残って少し悲しげに"ドーラ・母・妹・恋人"の一節を歌います。

街の天然痘 (曲:斉藤恒芳)

「天然痘ダンス」と勝手に呼んでいます。(原作では、オモル(アフリカの森の女神)が裕福な人々へ黒い天然痘を送ったが、街に住む金持ちは種痘を受けていた。オモルは種痘を知らなかった。そのため、天然痘は種痘を受けられない貧しい人達を苦しめることになり、同情したオモルは黒い天然痘を症状の弱い白い天然痘(アラストリウム)に変えた。という説明があります。そういうようなことを現しているのでは…と思います。) この場面は「ミュージカル12月号」のカラーグラビアに舞台写真が載っています。

TSサイトの稽古場通信で紹介されていた”スルド”という打楽器(大きな太鼓ですね)を演奏するのが駒田さん、平沢さん、川本さん、阿部さん。福永さんと縄田さんはダンサーたちと同じ白い衣裳で最初スルドを演奏していますが、途中からダンスに加わります。
舞台正面、前のほうのセリから白い衣裳のダンサーたちは現れます。ふち飾りのついた白い帽子をかぶっているため顔は見えづらいのですが、歌っているのが坂元さん、ダンサーが宮さん、本間さん、吉野さん。石川さんもいたのではないかと思うのだけど?
最後にセリから現れるのが天然痘に侵されたアルミロ。
彼を囲んでダンサーたちは踊ります。最後、坂元さんがアルミロを飛び越えてアクションを決め、去ります。最後まで残る二人は縄田さんと宮さんでした。

神様の罰 (曲:斉藤恒芳)

アルミロが天然痘を発病し、もうかなり重い病状。おびえて遠巻きにする少年達。センイはぼろ布を持ってきて、これを持って出て行けとアルミロに告げる。保健所の役人が見つけて隔離所へ連れていくまで道にいろと言う。しかし隔離所はひどい場所で行ったら二度と帰ってこられないと言われていた。 アルミロは出て行きたくない、ここにいると訴えて泣く。
なおも責めつづけるセンイにボルタが銃を持ち立ちはだかる。ボルタは、アルミロは仲間だからどうするのかアルミロに決めさせてやりたかった。ペドロの帰りを待ちたいというアルミロ。
そんなことをしているうちにアルミロが死んでしまうかもしれない。天然痘がみんなにうつるかもしれない。これは神様の罰だとピルリトが歌います。祈ろう…祈ろう…。
どうしていいかわからなくなって空にむけて銃を撃つボルタ。
ペドロとジョアン、プロフェソール、ドーラが来る。
アルミロはもう助からない。それを知ったペドロは、アルミロに「ここにいていい」と笑顔で告げ、アルミロは安心してドーラの腕の中で死んでいく。少年達の慟哭。
センイは前にドーラが来たとき、アルミロにじゃあお前も一緒に死んでやれと言ったことを悔やみ、「俺、あいつに死ねって言ったんだ…死ねって言ったんだよ…」と自分を責めます。ピルリトがそんな彼に気付いて「そんなに自分を責めてはいけない。僕は君のことを誤解していた」とセンイをなぐさめようとしますが、センイは「俺に触るな!…俺に優しくするな…」
わたしはいつもこのセンイの言葉でぼろ泣きしてしまいます。

刻み込まれた憎しみ (曲:斉藤恒芳)

アルミロを運び出す少年達。ひとり残ったボルタのソロです。どこに持っていっていいかわからない苦しみ。

星のムラート (曲:斉藤恒芳)

ギターを背中にかつぎ、荷物を持ったボアがふらりと下手から現れます。なごりおしそうに後ろを振りかえるボア。プロフェソールが追いかけてきます。 ボアは言う。「俺がここにいるとみんなが死んでしまう。」
袖をまくってみせたボアの腕にはアルミロと同じ天然痘の疱疹。隔離所へ行くという。
隔離所がひどいところだと知っているプロフェソールは、俺達が手当てをするから行くな!と止めますが、ボアの決心は固い。隔離所に行ったからって希望がないわけじゃない。
「お前はいつか本物の画家になる。そのときは砂の戦士たちの絵を教会の壁画に描け。そして俺を描くときは…」とボアはプロフェソールの顔をのぞきこむように、「まだ描いてくれるか?」「もちろんだよ!」
そしてボアは笑顔で言います。「ぶつぶつでいっぱいにしないでくれよ」
ガシっとボアを抱擁するプロフェソール。ふたりは帽子を交換し、別れます。
歌いながら去って行くボアを見送るプロフェソール。パネルが動くと下手側奥の台の上にボア。上手からピルリトが現れボアと一緒に歌います。この場面は音楽も映し出される映像も美しく、空に輝く星のようです。
プロフェソールは語ります。勇敢な男は心臓に星を持っている。死んだら心臓は天にとどまり星になる。ほんとにすごいよ、ボア!
泣きながら絵を描くプロフェソール。心臓に星を持つ男、勇敢な友達の絵です。神父が現れプロフェソールに今日は答えを聞かせてもらえるねと話かけます。神父の言葉を反芻し考えるプロフェソールの手元から絵が風にあおられて飛んで行きます。舞台はそのまま劇団へ。

自分を信じて (曲:高橋 城)

劇団。寺田はごろんと横になります。そこへ、びゅーんと走ってきた竹林。顔の上を飛び越えられて叫ぶ寺田(^^; なんと睦田(坂元さん)が足をくじいたという。
みんなにかつがれてくる睦田。保川が睦田の靴下を脱がせ、ひとこと。「臭うな…」
そうじゃなくて(笑)
足首は腫れていてもしかして骨が折れてるかも?
とにかく救急車で病院に連れて行くことに。(連れていかれる睦田は「靴下!俺の靴下!」って靴下にこだわってましたが、すごくお気に入りの靴下なのか?)
また一人減ってしまった。睦田が足をくじいたのは、振りがつくのが遅れたため徹夜で振りの稽古をしていて無理をしたから。もともと振付は合宿初日にはできているはずだった。振付家の井坂が責められる。井坂はTVのオーディションの準備で忙しく振付を考える余裕がなかったという。
本当に幕が開くのか?劇団員はみな不安に思うが、神山は自分を信じてやるしかないと、必ず幕はあけると決心は固い。

神山の強い決意で劇団員はやる気になったようだ。睦田は筋トレ王だし、脳みそも筋トレしてるから骨折れてても言わなきゃわからないなどとむちゃくちゃな冗談も出て明るい雰囲気が広がる。
初日直前のアクシデントで、かえって絆が強くなったようだ。
千島は今まで平行してやっていた撮影の仕事も終わり、迷惑をかけたからと松坂牛を買ってきたのでお昼はすき焼きということになる。喜ぶ広瀬(福永さん)。

用意のために千島たちが去っていった後、奥から叫び声。
「千島が倒れた!」

駆け寄ろうとする劇団員達。帽子をかぶって駆け出す瞬間、舞台はブラジルへ。

ドーラそしてペドロ (曲:斉藤恒芳)

シーツにくるまれたドーラが抱きかかえられて連れてこられる。取り巻く少年達。まさかアルミロとボアだけじゃなくドーラも…!
うろたえる少年達。このままここにいたらドーラは死んでしまうかもしれない。ペドロもどうするべきか決められない。センイは「ドーラは俺が連れて行く!保健所の役人が来るまで一緒にいてやる!つかまってもいい!」とド−ラを抱きかかえようとしますが、ドーラが「待って、センイ…」。ドーラは切々と胸のうちを訴えます。 大丈夫、ちょっと疲れただけ。どこにも行きたくない。
みんなもドーラと離れたくない。でもこのままここにいてはドーラはよくならない。
「ドーラはここにいてはいけない。俺も一緒に行く」というペドロに動揺する少年達。 ドーラは切々と訴えます。みんなに迷惑をかけたくない。出て行かなくちゃいけないことはわかっている。でも今夜だけ…今夜だけはここにいさせて。ペドロと一緒にいたい。
抱き合うペドロとドーラ。
黙ってドーラの声を聞いている少年達。
センイがふらりと「行くぞ。みんな表に出るんだ。」
続いてガトも「センイの言うとおりだ。今夜は外で寝るんだ」
少年達が去り二人きりになったペドロとドーラ。
ドーラは前から砂の戦士たちの首領であるペドロのことを知っていて、憧れていたと告白します。
ふたりのデュエットとラブシーンです。

少年達は外でろうそくを手にドーラのことを思い、祈っています。
(この場面はミュージカル12月号のカラーグラビアに舞台写真が載っています)

終わりの日・始まる日 (曲:YANCY)

「ドーラ!!」というペドロの悲痛な叫び声が聞こえ、慌てて戻って行く少年達。
ドーラは神に召された。いつも落ちついているジョアンの「死んじゃ嫌だ!」という叫び。
それぞれがドーラを亡くした悲しみに耐えている。
「なんでそんなにすましてられるんだよ!黙ってられるんだよ!」とセンイの叫び。

彼女は幻なんかじゃない、たしかにここにいたんだ…
ドーラを思い少年達は歌います。
(ドーラはセリ下がっていきます。)

歌の途中?でそのまま劇団の場面へ。「それで、千島の具合は?」

淡々と答える木村。千島は過労によるなんらかの急性疾患だろうと。(このあいまいな言い方がポイントなのですよね)
睦田の足は骨には異常なく、本人も出たいと言っている。河原は本人は帰ってきたいと思っているが家族が反対しているらしい。
この公演幕は開くのか?
代わりの人を客演で呼ぶと言ってもあと3日しかないこの状況では…。
劇団員たちにあきらめの気持ちが広がる。
保川が神山に「どうするか決めてください。決定に従います。」と答えをうながし、神山が口を開こうとしたそのとき。
「だけど、君はどうしたい?」
口をはさんだのは寺田。
「自分はどうしたいのか聞かせてくれないか。」

劇団のことなんだから黙っていてくれないかと黒藤に言われて寺田は答えます。

どうしてだ?
どうして劇団という殻に閉じこもるんだ?
みんなで歩いていれば楽だし、責任は先頭の人間に押しつけて何かあったときだけ騒ぎ出して誰かの決定にしたがっているだけなら子供でもできる。
劇団なんか関係ないだろう?僕だってこの舞台を上演する仲間だろう?

大切なのは自分で自分の道を決めることだ。
僕はやりたい!
僕はこの芝居の幕をあけるために、そのためにここに来たんだから。
そのためにみんなで今までがんばってきたんだから。
僕はあんたたちとこの作品を作りたいんだ!
さあみんなの考えを聞かせてくれ!

汽笛の音、音楽とともに一瞬のうちに舞台はブラジルへ。

新しい旅立ち (曲:斉藤恒芳)

プロフェソールは決めた。もうペドロの重荷にはならない。
リオに行って、絵の勉強を始める。
「おい、何を勝手なこと言ってるんだ!」というセンイにプロフェソールは語りつづけます。
現実から目をそらして先送りしていても何もならない。
たとえ夢でもかまわない。
自分で自分の未来を選ぶんだ。
そうだよな、ボア…

プロフェソールの歌から、少年達がそれぞれ未来について歌う希望に満ちた歌となります。
ここから出て行き新しい世界に未来を求めるもの、信頼するペドロについていこうとするもの。
その明るい光の中でひとり背を向けるセンイ。そのセンイにはっとしたようなまなざしを向けるペドロ。
だけどペドロの目はすぐに明るい未来を歌う少年達に向いてしまいます。
センイはひとりぼっちで…上手の端の壁にもたれ、歌う少年達の姿を見つめています。
センイの表情。孤独に満ちた哀しみをたたえたまなざし。
見ているこちらが心が痛くなるほどに、切ない。
今思い出しても胸がしめつけられるようで泣けてきます。
みんなの姿を見ていられなくて顔をふせてうずくまってしまうセンイ。

そして、みんなの夢が語られたあと。
ペドロは「俺たちはどこにいても家族だ!」
そして、センイに向かって言うのです。
「あとはお前だけだ、センイ」

どこへも行きようがないセンイ。 プロフェソールは去って行き、ペドロももう自分のそばにはいない。
みんなの希望に満ちた夢を聞きながらひそかに泣いていたセンイ。
「俺は未来なんか望んでない、俺が聞きたかったのはこんなことじゃない!俺はあんたに…」

最後の言葉をのみこんだままセンイは駆け出して行きます。

サーカスのブランコ乗りに (曲:斉藤恒芳)

舞台にひとり走り出てくるセンイ。
俺は誰かに認められたかった。だけど誰も認めてくれなかった。
俺は誰かに愛されたかった。だけど誰も愛してくれなかった。
俺はいつもひとりだった。
誰も俺をつかまえることはできない。看守にも警官にも。それが俺のやつらへの復讐。
そして生まれ変わり、新しい世界へ。
生まれ変わり、サーカスの空中ブランコ乗りに……
…俺だけの世界へ。
心の叫びを残して、センイは壁をよじのぼりなにもない大空へ飛び立っていきます。

呆然とセンイの最期を見つめる少年達の姿…。鐘の音が鳴り響く中、舞台は暗くなっていきます。


「新しい旅立ち」の場面はあんなに明るい場面なのに、切なくてたまらない。この場面、わたしは完全にひとりぼっちのセンイの気持ちにシンクロしているので、他の少年達の明るい希望に満ちた歌を聞きながら、センイと一緒に泣いていました。もうぼろぼろ涙が…
そしてペドロの「あとはお前だけだ、センイ」
この言葉はあまりにも残酷。なぜ、こんなことを言うの?ペドロ!とわたしは心の中で叫んでいました。みんなでセンイをおいつめてどうするよ。他の誰が背を向けてもペドロだけは彼のほうを向いてやらなきゃ…。ペドロに見てほしかった、ペドロに認めてほしかったのに。寂しい、切ない、やりきれない…センイの最期でした。

エンディング - 劇団

暗転のあと、ぼんやり明るくなると夢とも現実ともわからない空間。
芝居の中の歌やざわめきの断片が次々と流れ消えていく。その中で電話が鳴り「死んだ…?」という誰かの声。
ここは劇場らしい。床に横になっているのは寺田。うたたねをしていたのか、めざめて起きあがる。
木村と保川が話しながらやってくる。彼らの話を聞くとどうやら舞台は終わったらしい。劇団の先の主宰の追悼公演として上演されたこの舞台。
あの人観ててくれたかな?と二人は話しあっている。
寝起きのぼおっとした頭で話に参加する寺田。
- そうか、終わったのか。いろんなことがあって、混乱してしまった。なにも思い出せない…

保川はやはり役者をやめるという。
- 残念だな…。

「積みこみ終わりました!」という元気な河原の声。
- 河原くん、戻ってこれたのか。よかったな!

河原はやはり実家に戻って家業を手伝うと言う。でも最後にこの芝居をやれてよかったと。
- そうか…君は?保川くん、君の感想が聞きたいな。

「ま、俺もそうだけど。」と保川。

次々と現れる劇団員。睦田も千島も元気な様子。
神山が現れ、これで全員揃った。

木村が神山に話しかける。
「神山さん、今も言ってたんですよ。寺田さん、見ててくれたかなって。」
「見てたさ、きっと…。」

あのとき、千島が倒れたあの日、神山は公演も劇団もやめてもう自由になりたかった。
あのとき寺田が口をはさまなければ、きっとやめていた。
あんたたちとこの舞台を作りたいという寺田の言葉がなければ何もかも投げ出していた。

- …そうか…僕は死んだんだ。
あの日、千島さんを見舞いに行った帰りにバイクで転んで…

神山はみんなを集めていまは彼らの前にはいない寺田へ話しかけます。
1列に並んだみんなのうしろで彼らを見つめ、神山の言葉を聞いている寺田。

今日、無事に千秋楽の幕が降りたよ!
このあと劇団を去るもの、残るもの、新しい世界へ向かうもの様々だが、誰も他人を責めたりしていない。みんな自分の意思で、自分の未来に目を向けている。
あの日君が言ったとおりに。
寺田、プロフェソール!
君のおかげだ。ありがとう!

寺田のモノローグ。
ヒトの時間はこの砂の流れのようだ…。指の隙間から零れ落ち…やがて消え去る。
(寺田の伸ばした手。指の間からきらきらと零れ落ちる金色の砂。)
だけど幻ではない、僕はたしかにここにいた。
仲間たちと一緒に。

カーテンコール(さよならのサンバ)

幕(?)が開くと、砂の戦士たちがそこに帰ってきています。ホントうれしくなるんですよね、この場面(^^)
「天然痘ダンス」のときの楽器"スルド"が再び登場。川本さんは舞台奥センターで弦楽器"ビリンバウ"(TSサイトの稽古場通信を参照)を演奏。その左右に半円を描くように舞台を囲み並んで"スルド"を演奏するのは駒田さん、平沢さん、阿部さん、宮さん。福永さん、縄田さんも演奏してらしたと思う…(ちょっと自信なし)。
宮さんがとっても楽しそうに演奏してらした姿が印象的です(^^)
舞台中央には、ふたりづつ二組の戦士達。下手側が横田さんと吉野さん、上手側が石川さんと本間さんです。
ふたりの息をあわせつつ、ダンスのような闘いのような、アクションのような。足技を多用した鋭くしなやかな動きって感じかな。最後はお互いをたたえるように握手で終わります。これがカポエィラなんだろうな。
次に坂元さんと幸村さん。さすが!の動きです(^^)
最後は楽器係の人以外全員でちょっと踊ります。
続けて、「さよならのサンバ」。坂元さんの歌から始まり全員が入れ替わり立ち代わりすこしづつ歌い継ぎます。(友達によると平沢さんは4番目だったそうな。)客席も手拍子で参加。キャストのみなさんも楽しそうですが、観ているほうもすっごく楽しくてわくわくします(^^)
歌い終わったあと、全員1列に並んで挨拶。前に出てきてオケピットのみなさんにも拍手!
また元の場所に戻って1列に並んで客席に手をふりつつ、いったん幕。

拍手に応えてカーテンコール。日曜の夜の部からはこのあとのカーテンコールで特技披露アクション大会(?)まで行われたのですよね。そのバージョンでわたしが観たのは千秋楽だけですが、報告は星空掲示板にぽろぽろと書いたとおりです。本当に楽しいカーテンコールでした!
星空掲示板の千秋楽報告はこちらです。


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「砂の戦士たち」に関する掲示板の書きこみはこちらです。
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