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●内容の詳細とわたしの感想です。内容説明はあくまでも舞台を観たわたしの印象と記憶と解釈によるものです。実際の脚本や演出の意図とは異なるかもしれません。その点をご了承のうえお読みください。ご意見ご感想(苦情でも)がありましたらメールにてお願いします。間違ってることを書いてたらぜひぜひ教えてくださいね! ●参考資料:パンフレット、終演後の劇場ロビーに掲示された曲名リスト、サザンオールスターズ/桑田圭祐CD ●場面名はわたしが勝手につけました。 |
ちょっと余談なのですが、わたしは上手側の席での観劇が多かったのですけれど、日生劇場の千秋楽、初めて下手寄りの席で観たのです。どうしても曲名とか場面展開とかに意識を奪われがちだったそれまでの観劇。しかしこの日はそういうことを忘れ、純粋にお芝居を観ることができました。席の違いも大きいですけれど、今まで見えなかったものがいろいろ見えました。 わたしはこの日、初めて、この舞台を観て泣きました。 解禁祭を明日に控えたクラウディアと細亜羅の遠い距離をへだてての会話。今までの観劇との違いがいちばん大きかったのはここかもしれない。 「そんな顔しないでください」とクラウディアに言われたときの細亜羅の顔がはじめて正面からちゃんと見えたこの日、その顔を見て、ぐっときた。その後の展開に涙してしまった。 細亜羅を愛することを知ってしまったクラウディアは、身も心も細亜羅のもの、明日解禁祭を迎えて他の男に抱かれることは死よりも耐えがたいと思う。親子であることを知った毘子蔵に祭りに出ない方法はないのか、自分には愛する人がいるのだと訴えてみたが毘子蔵は力を貸してはくれなかった。誰も神親殿にはさからえない。細亜羅と会うことはできない。ひとりで逃げるしかない。 細亜羅は、当然ですがクラウディアより大人なんですね(毘子蔵と幼馴染ということはクラウディアよりかなり年上)。そんなことはいい。逃げたりしたら捕らえられ、神親殿にさからったものとして処刑される("くげ"にかかげられる)。解禁祭までもう時間がない。無茶なことはしないで生きていてくれ。これからのことは祭りが終わってからゆっくりと考えようと言う。 クラウディアの決心は固い。 自分の命のために、あなたを思う心を犠牲にすることはできない。 「そんな顔しないでください…」 そう言われたときの細亜羅の顔。悲しみをたたえたその目に、本当に「そんな顔しないで」と言いたくなった。 逃げられるあてもないのに「大丈夫です。逃げおおせてみせます。」とクラウディアは微笑んで手を振り、背中を向ける。 木のそばに立つクラウディアの後姿、長さの違う重ね着の衣裳が描く色彩が美しいです。 BGMは「いとしのエリー」 |
クラウディアの姿が見えなくなると、上手側の段上に幹国の着物をまとったおりえの姿。おりえのソロ歌「逢いたくなった時に君はここにいない」。センターに歩きつつ歌います。レアさんの表情が…とても切ないです。 途中から下手側にカーテンがひかれて細亜羅が登場して、おりえの歌にかぶせて「Oh!クラウディア」、上手側にもやはりカーテンがひかれて毘子蔵が現れ、細亜羅に続いて「Oh!クラウディア」を歌います。(この曲のためにヒロインの名前をクラウディアにしたのかな。) 2曲をミックスした編曲になってます。最初の頃、わたしはこの場面、レアさんのソロの間はよいのだけど、男性二人が歌う「Oh!クラウディア」が入ってくるとどうも気持ちが醒めて冷静になってしまっていたのですが、だんだんそういうことはなくなり「Oh!クラウディア」の歌に切なくなるようになりました。レアさんがセンター奥で着物をまとった姿で体をそらしたりしていていて、その姿が美しいなぁと思う。ダンサーはちょっと動くだけでも本当に美しいですね。 細亜羅と毘子蔵は舞台中央に向かって歩いてセンターですれ違い、また離れていきます。そのとき背後のカーテンも一緒に動くので、カーテンは一瞬重なってセンターを隠し、再びカーテンがひらくと、おりえの姿が消えていて、舞台中央にたたずんでいるのはクラウディア。解禁祭のために装った薄物の重ね衣裳をまとった姿がなんとも美しいです。クラウディアはゆっくり歩きながらその薄物の衣裳を一枚一枚脱ぎ捨てていきます。このときの衣裳の色ですが、前の場面とは重ねた色が逆になっています。オレンジ、赤、黄色、グリーン…と一枚づつ脱いでいくと、上からふりそぞく照明の色が衣裳の色にリンクして変わっていきます。美しい場面でしたね。 音楽が終わるとともに最後の一枚を脱ぎ捨て身軽になったクラウディアは、身を翻して駆け出します。 しかし。 |
クラウディアの行く手には不気味な追っ手の気配。どっちに逃げても追っ手は迫ってくる。クラウディア以外誰もいない舞台なのに赤い照明と動物の吐息のような音が満ち、とても不気味です。
ひとりまたひとりと現れる追っ手達。クラウディアの脱ぎ捨てた衣裳をざざっと片付け、だんだん人が増えていく。ヤンもゆっくりとセンターから現れます。暗い中現れるこのときのシルエットがまたかっこいい〜とか言ってるわたしはたぶんファンばかです。 大勢の人が舞台を埋めてタップ。根国、幹国入り混じっています。神親殿にさからった者の前では敵国も関係なくなるのですね。それだけ神親殿が絶対ということなのでしょう。 音楽はなく、タップの音だけが響き、クラウディアを追い詰めてゆきます。緊迫感。最終的にヤンがクラウディアの真正面に迫り、鋭い目で見つめながらタップ。ヤンはクラウディアの腕を捕らえ「縛り上げるぞ」。追い詰められるクラウディアはヤンがさぞ怖かったと思います。でも…ちょっとだけ代わってほしかったりして(笑) タップするみなさん、ヤン以外の人は衣裳をもともとたくし上げているので問題ないのですが、平沢さんは衣裳の裾が邪魔にならないように片手でちょっと裾を持ち上げてます。日生劇場の後、福岡でひさしぶりに観たとき、裾を持ってなくて変えたのねって思っていたのですが、大阪公演ではまた持ってまして…本人に聞いてみたところ「名古屋、福岡では持つの忘れてた。」らしく。なんかタップ踏みにくいなーって思っていたそうです。。。 |
神輿のようなものが運んでこられて、捕まったクラウディアはその上に乗せられます。クラウディアの後ろにはヤンが刀を掲げて立ちます。クラウディアは座り込んだまま歌います。曲は「白い恋人達」。
長い棒を持った人が二人、棒で誘導してクラウディアを立ち上がらせ、クラウディアは柱に縛り付けられます。天井からの照明が斜めに交差し、クラウディアの自由が奪われたことを示しています(のかどうかは知りませんが、観ていてそう思った)。そのまま下手の端に運ばれ、クラウディアは下手端の段上に縛り付けられている状態になります。 そして、裁きを下すため、神親殿が地上へと降りてくる。 |
両国の民に迎えられて神親殿がゴンドラを降ります。ヤンも下手袖からすっと現れ、神親殿を迎えます。神親殿の白いドレスの裾が大きく、お世話係が数人ついて裾をゴンドラから出して床に広げます。そして儀式のような動きがあり、体をねじった神親殿がこちらを向くと、その顔は鬼の顔になってます。神秘的な場面のはずなんだけど、最初は「何この段取り芝居は?」ってちょっとイラっとした。数回観るうちに慣れましたが、でもやっぱり神親殿があの衣裳でなければならない意味がいまいちわからない。動きがもたついて見えるところが一番のマイナス点かなって思います。神秘的にすべるように動けるしなやかな衣裳だったらよかったのにと思う。
鬼の顔でクラウディアを指差す神親殿。そしてゆっくりと動き"くげ"にかける命令を下そうとします。そこにすべるように現れた細亜羅。神親殿の前で静かに立ち止まり、神親殿に背を向けたまますらりと刀を抜く。そのまま振り返ってばっさり、神親殿を袈裟懸けに斬る。 また正面を向いて「俺が間違っていた…」と独白。神親殿に従ってクラウディアを失うより、自分の心に正直になることを決めた細亜羅。シャキンと刀を鞘に収めた音とともに神親殿の鬼の面が割れ、白い衣裳が引き抜かれ、真っ赤に変わります。(これをやりたいがための大きな白いドレスだったの?) クラウディアのもとへ駆け寄る細亜羅。ぼうぜんと見守る人々の真ん中で神親殿が崩れ落ちます。そのとき、センター段上へ駆け出してくる龍の子、そして響きわたる声。 「ねえさん!」 これを受けて「ねえさん?」とヤンが聞き返しますが、わたしも同じ気持ち。ねえさん?神親殿は龍の子の姉? そして獣のように咆哮し、龍の子が感情を吐き出そうとしたとき、神親殿が龍の子をいさめます。 あなたの心が憎悪にうめつくされています。私はその表情をなくそうと愛のない世界を作ったのに、あなたがそんな顔をしては、私のやってきたことはあまりに無力。あなたが継承してくださいね…。 と、まあこんな内容の言葉なのですが、このYU-KIさんの台詞、日生劇場の初日に観たときはいきなり現実に引き戻されてしらけました。だけど、観るたびに良くなっていったと思います。自分が慣れたせいもあるとは思うけど、福岡で見たときはほとんど気にならなくなって自然に聞けるようになりました。YU-KIさんの表情に切なくなるようにもなりました。 このとき、神親殿は龍の子のほうを見ずに、心を感じている。 2階席から観ると、このとき床にひろがった神親殿の赤いドレスに照明がぐるぐると模様を描いて、不思議な雰囲気を出していました。 最後に「龍の子よ」と言って振り返って龍の子に手をさしのべるのですよね。ここのYU-KIさん、綺麗だなぁって思います。弟をいとしく思う心の、人間ですよね…神親殿。 龍の子は剣を掲げて念力を使い、倒れた神親殿を木の後ろに運びます。そして、姉の言葉に従い、人間たちを支配しようとします。龍の子の怒りがこめられた剣のひとふりに動揺する人間たち。でもヤンだけは動じてないです。この段階では。 龍の子は怒りをこめて語ります。 なぜお前達は同じことを繰り返すのだ? どんなにいけないことだとわかっていても、戦わずにはいられない愚かな人間たち。神親殿はそれがわかっていて、小さな戦いを与えつづけることでお前達を生かしつづけてきた。 この龍の子の言葉に、「生かされてきた?」「神親殿は戦いを認めていたではないか」とヤンも動揺。神親殿は何もかも知っていて自分達をあやつっていたのだと知り、人間たちは総崩れとなります。ヤンもがっくりと膝をつきます。 龍の子は言葉を続けます。「この海の向こうにはお前達と同じ人間がいる。」 海の向こうに陸が!とまたまた動揺し振り向く人間たち。 龍の子はとどめをさすように続けます。 「外へ目を向けることも許さなかったのは開国も滅亡のはじまりだからだ。殺し合いをせずにはいられない愚かな人間たち、それがお前達の愚かなDNAだ!」 と、こんな内容なのですが(順番がごっちゃになっているかもしれません。開国の話が最後だったかも)、この龍の子の台詞、すごい説得力。風間さんの芝居がうまいのと、声が惚れ惚れするほどいいんだな、また。表情も静かにほとばしる怒り、恐怖でもって人間を支配する者の迫力。この龍の子の台詞のバックに静かに流れているのが「怪物君の空」だと思います。 で…、わたしがいつも残念に思うのが「DNA」という言葉。でぃーえぬえー?せっかく盛り上がっているのになんかがっくりくるのだ、この言葉を聞いたとたん。うちのめされた人間たちも「俺達のDNA…?」とかぶつぶつ言うのだけれど。「遺伝子」じゃだめなんだろうか。 話戻りまして。 すっかり魂を支配された人間たち。龍の子は剣を掲げておごそかに告げます。 さあ、人を愛することを知った愚かなふたりを"くげ"にかけろ! この龍の子の言葉は思わず言うことを聞いてしまいそうなくらい迫力あります。 サイキ…サイキ…とつぶやきつつ細亜羅とクラウディアをとりまく人間達。 ふたりの乗った台がセンターに引き出されてきます。 細亜羅とクラウディアはお互いを信じあい愛することを知った喜びの中、死を覚悟する。殺気立つ人々の中で、抱きあい口づけをするふたり。 このときヤンは下手側後ろに行き、さりげなく上着を脱いでいます。 |
まさに二人が処刑されようとするそのとき、センター奥から走り出てくる人影。上着を脱ぎ捨て額に巻いていた兜代わりの鉢巻を解いた毘子蔵です。ふたりを処刑しようとする者達をばっさばっさと斬り進みセンター前面へ。低い姿勢でびしっとポーズを決める岸谷さん、すっごくカッコイイです。乱れた前髪の下のするどい視線、剥き出しのたくましい二の腕に汗が光る。美しい。 このときの曲は「ボディ・スペシャルII」 決め決めのところに、台上の細亜羅から「ひーちゃん!」と声をかけられちょっと力が抜ける毘子蔵。「ひーちゃんって呼ばないで!」岸谷さんはこういうところの抜き具合がうまい。 どうして?と問う細亜羅に「お前が命かけた女に聞くんだな」(ぎゃーかっこいいっ) で、クラウディア「おとーさーん!」またがっくり(笑) 囲んでくる者たちを迎えうち、戦う毘子蔵。細亜羅とクラウディアは台から下りていったん去っていきます。(これは実際にふたりが去ったんじゃなくて、毘子蔵が動いて戦いの場が移ったという設定だと思う。) このときヤンは下手後ろのほう、台の向こうから、毘子蔵を鋭い視線で睨みつけています。席によってこのときのヤンがしっかり見えるときがあったのですが、ものすごい鋭い視線に、全身からオーラが出ていて迫力。むちゃむちゃ怖くてかっこよかったです(そんなとこ見てる人はほとんどいないと思いますが)。 毘子蔵が上手側に移ったとき、ヤンはたたたたたたっと走り出てきて、台の上にスタッと駆け上がる。その鋭い動き、か、かっこいい…。そして台上から斬りあう毘子蔵を見つめ、毘子蔵がひとりになるのを待ちます。そして毘子蔵が台の前を通って、下手側に通り過ぎようとしたとき、その背中に向けて叫びながら、刀を振り下ろしつつ台から飛び降りるヤン。応じる毘子蔵。 ふたりが斬りあいながら台の下を通って上手側に移って斬りあううちに、毘子蔵が足をとられて倒れ刀を落としてしまいます。好機!とばかりにヤンが刀を振り下ろそうとしたとき、「毘子蔵!」というおりえの叫び声。その声に一瞬気をとられたヤンは毘子蔵を取り逃がしてしまいます。毘子蔵の刀を袖に投げ入れ、あらためて毘子蔵を斬ろうと刀を振り下ろすヤン。その刀の下にいたのはおりえでした。おりえの額にも兜代わりの鉢巻はない。刀も抜かずに斬られたおりえに目をみはって驚く毘子蔵。 ヤンは、立ちはだかっている後姿のおりえの首に手をかけて毘子蔵の前からどかせて、あらためて毘子蔵を刺そうと刀をむける。しかしおりえが必死の表情で走ってきてまた毘子蔵の前に立ちはだかり、ヤンの刃をふたたびその身に受けるのでした。 毘子蔵の膝元に崩れ落ちるおりえ。 おりえは刀を抜くことなくただ毘子蔵をかばって斬られるんですね。どうして抜かなかったと毘子蔵に問われて「わからない…」でもとても気分がいいと。やっと解き放たれて自分に正直になれた。これがきっと人を愛するということなんだと。毘子蔵の腕の中でおりえは愛しそうに毘子蔵の頬に手を触れ、優しく微笑んで息たえます。 「ありがとう、毘子蔵…」 「ありがとうって…なんだよ…?」 おりえの身体を抱きしめ、口づけする毘子蔵。生きている間にしてあげてほしかったと思う…。 これまでの戦いを上からずっと黙って見ていた龍の子がつぶやく。 「誰かのために、死ねること…」 毘子蔵とおりえ以外の人は時間がとまっていたかのようですが(龍の子が、毘子蔵とおりえの行く末を見届けるためにそうしていた?深読みですか?)その声で呪縛がとかれたがごとく、人々はゆっくりと動き出します。 叫びながら斬りかかろうとするヤンを毘子蔵は「やめろ!」と押しとどめ、おりえの身体を横たえて「この女には触れさせない!」と言いながらおりえの剣をすっと引き抜く。このときの岸谷さんがゾクゾクするほど艶っぽくかっこいい。 そしてヤンと毘子蔵、キング同士のサシの勝負が始まる。音楽再開。もうこのへん、舞台からはものすごい気迫で、観ながら瞬きはもちろん息もしてないかもしれません(笑) 力は互角。離れて斬り合うのはもちろん、そのスピード感に迫力、ガシッと刀を合わせお互いに力を相殺しながらつかみあって、移動するときのふたりの表情、とにかく一瞬も目が離せません。 そして渾身の戦いの後、先にヤンが斬られ、毘子蔵が斬られ、最後は相討ちになり二人は倒れます。 最後まで愛を知ることなく硬派を貫いて死んでいったヤン。もうひたすらカッコイイのですが、ただ、わたしの希望としては…ヤンにもそういう(愛を知るというような)ドラマがあったらよかったのになーってちょっと残念でした。それを平沢さんに言ったところ「愛を知らずに死んでいくのがドラマなんだよ」ってことでした。ニクイこと言いますね。 最後に倒れる直前、ふたりは斬り合いながら「ヤン…」「毘子蔵…」ってお互いの名前を呼び合いますが、この二人の間ってどうだったんだろう。友情っていうのは変だけど、好敵手に対する尊敬みたいなものが芽生えていたのかなぁなんて思いました。こいつと刺し違えるのなら本望…というような。それはそれでひとつのドラマなのかもしれないなんて思いました。 相討ちになった毘子蔵とヤンは、それぞれ上手の端のほうで倒れて息絶えます。 上手端の前の席で見たときに、平沢さんは舞台前の端で倒れていて目の前だったので気づいたのですが、しばらくの間上半身が大きく動くくらい息を切らしておられます。当たり前ですよね。あれだけ渾身の立ち回りの直後なんだから。 ここの立ち回りは本当にすごい迫力です。 岸谷さんは「天翔ける風に」で平沢さんを見出したとき、さぞうれしかっただろうななんて思いました。パンフの対談にあった、岸谷さんが「すごいのがいた!」って寺脇さんに語ったというのもこの場面を観ると本当によくわかります。 |
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