T.S MUSICAL FOUNDATION ORIGINAL MUSICAL
中国地区演劇鑑賞会統一企画 9月例会


YESTERDAY IS…HERE

一生に一度光り輝く瞬間 人は天使に近づく

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2幕です《2000.10.7》

ストーリー展開を詳しく説明しています。舞台を未見の方で知りたくない方はこの先を読まないでください。


2幕は青年の歌からです。『愛が胸にあれば』
車椅子に乗ったジョーが現れる。ジョーは立ちあがろうとするが、ひざが痛むのか立てない。青年はジョーのところに駆け寄り「ひざが痛むんじゃないの」と心配する。今日は「僕の話をしてもいいかな」と青年は自分のおばあちゃんの思い出話をする。青年はジョーの姿におばあちゃんを重ね、ジョーの話から、おばあちゃんのことに思いをはせていた。そしてジョーにタックの話の続きをうながす。ジョーはまた語り始める。
タックは本当はボクシングなど好きじゃなかった。殴られるのも嫌だし、殴るのはもっと嫌だった。しかし回りのみんなはタックの次の試合を期待した。少年達もタックを違う目で見るようになった。何もない町だ。あっという間にタックはみんなの人気者になった。

青年がジョーの車椅子を押して退場すると、タックを探す町の人たちが現れる。タックは慌てて隠れるが、みんなに見つかって食べ物をプレゼントされたり、お酒を薦められたりして困ってしまう。ボクシングなんて知らなかったんだ、もう試合はしないよと歌う。『町の人気者』タックはまるでサーカスの見世物になった気分。

そんなことをしているうちに、ミューの姿が見えたので、タックは彼女と話があるからと人々を追い払う。さて、ミューはタックを座らせて前に立ち、おおきな身振りで何かを言おうとする。タックは期待して待つが…ミューは言いかけてやめ、また言いかけてやめ…繰り返しタックの期待をするっとかわす。結局何も言わないミューにタックはちょっと怒って「もう!今度こそ何か言ってくれると思ったのに!」と言うと、ミューはしくしく泣き始める。タックが慌てて「ごめんよ」って謝るとミューは笑って「ばあ」とする。うそ泣きでタックをからかっていたのでした。「こいつ〜」とタックはミューを追いかけてつかまえようとするが、ミューはするすると逃げる。そんなおいかけっこをしているうちにスムース達が現れる。タックはスピードの背中に乗って、「追いかけてくれ!」と叫び、スピードも乗せられ、「よし!」と追いかけようとするが、はっと気がつく。「おい!お前やること子供っぽいんだよ。」「そうか?面白いのに」「いったいいくつなんだよ?」タックは自分の歳を数え始めるが延々と終わらない。スピードが業をにやし「んなわけないだろ!」とやめさせる。もうせっかくひさしぶりに数えたのに〜。

そんなことはともかく!「スムース!スピード!スカンク!3人揃ってスリーS!!」の3人が言うには「タックの次の試合が決まった」
だけどタックは「もうボクシングなんてやらない」殴り合いはもう嫌なんだよと断る。3人は「せっかく一緒にやっていけると思ったのに、友達だと思ったのに」と不満げに去って行く。
この3人とタックの話の最中、バーディとミューはボクシングの真似をして遊んでいます。ミューは子猫のように、バーディが差し出すサンドバック(?)にじゃれつきます。(可愛い!)

タックになんとか試合をさせたいスピードはひとり残り、タックに自分の家族の借金の話をする。病気や借金で一家がバラバラになる危機、金さえあればなんとかなるのにと。『一家離散』
スピードのうそに騙され、タックはスピードの借金がそれで返せるようになるならと試合をすることを承知する。

さてさて、そんなわけで続くタックの試合。なぜか負け知らずのタック。『試合を重ねて』
打っても打たれてもリングの外にミューの笑顔があればそれで幸せなタック。勝つか負けるかタックの綱渡りが続く。
タックが勝つとホントにミューはうれしそう。「ミューはお前の戦っている姿を見るのが好きなんだ」とスムースに言われ、「そうか。きっと大切な思い出があるんだ」とますますがんばるタック。だけどホントはちょっと休みがほしい。疲れているタック。でもみんなの前では元気なふりをしてしまう。
この場面、ガールズの歌とピエロたちのダンス、タックのドラム缶乗り、フラフープなど盛りだくさんです。まさにサーカスの雰囲気ですね。ピエロ達がタックを的に輪投げのようにフラフープを投げるのですが、的にされる平沢さんはちょっと怖そうでしたね。わたしが観たときに、投げたフラフープがひとつはずれて平沢さんが自分で拾ってかぶっていたのにはちょっと笑えました(^^;それにしてもフラフープ4本まとめて廻してしまう平沢さんって…すごくない?

そんなとき、スムースに「どうしてファイトマネーを受け取らない?」と聞かれ、タックはスピードの借金を返すために試合をしているんだと打ち明ける。スムースはうすうす感じていて、「それは作り話だ。お前に試合をさせたかった。だけどなぜそうしたかったかはわかるだろう」とタックに告げた上で、このままがんばれば、ボクサーとして名を挙げることができるとタックを説得しようとする。だけどタックはもともとボクシングがやりたくて試合をしてきたわけじゃない。借金を返したらやめる約束だったんだ、もうやらない…と、はずしたバンテージをスムースに渡して、肩を落とす。そこにやってきたスピード達。ミューもいる。「我らのヒーローチャンピオンタック♪」とタックをたたえながら陽気にやってくる。
スムースはバンテージを投げ捨て「どうして嘘なんかついたんだ。タックはもう試合はしないと言っているじゃないか」とスピードを責める。

事情を察したミューは、スムースが投げ捨てたバンテージを拾って握り締め、タックのところへ行って懸命に何かを訴えようとする。一所懸命言おうとしている言葉は「ボクシング…」
やめないでほしい、ボクシングをやめないでほしい…ミューは懸命に「ボクシング」と繰り返し、そんなミューにタックは心うたれて「君がそんなに言うんならやめない。君がもっとしゃべれるようになるまで俺ががんばるよ」と、もう一度試合を続ける決心をする。
傷だらけのヒーロー、チャンピオンタック。ピエロ達のコーラスの中、タックとミューはボクシングの真似をして遊びながらセットの陰に消えていきます。内容とは関係ないですがこの場面、平沢さんの腕とか肩とか汗が輝いて綺麗だなぁとわたしは思っているのですが、そんなこと見てるのって・・・わたしだけ?・・・じゃないよね・・・。

場面変わってジョーと青年。ジョーは語ります。ボクシングを続けることはタックにとっては本当はつらいことだった。しかしタックはミューのため、傷だらけになりながら試合を続けていった。ミューはそんなタックの気持ちを知ってか、ほんの少しづつ言葉を発するようになっていった。

そんなある日のタックとミュー。タックはミューに自分の名前を言って欲しくて、「タック。俺の名前はタック。言ってごらんよ、タック。」と繰り返しミューに教えている。だけどミューはわかっているのかいないのか、手に持っている包みからドーナツを取りだしタックに見せるばかり。「だからそれはドーナツ。そうじゃなくてタック」一所懸命教えてるのに、ミューが何か言うとしたら「ボクシング」で、タックが「もうそれはいいから」ってちょっと怒ると、ミューはふくれて向こうを向いてしまう。ここでタックは「怒らなくったっていいじゃないか〜」とミューのベストを掴んですねるんですが…とっても可愛いです。
とりあわないミューに、もう…俺がこんなにがんばってるのに…人の気も知らないで…とがっかりしてミューから離れて肩を落とすタック。殴られたところも痛いし…。

ミューは振り返ってそんなタックを見つめる。見つめながら「タック…」
落ち込むタックはなにげに「はーい…」と返事をしてからはっと気づく。「もう一度言って!」「タック・・」「わかってるの!?俺の名前だよ!!」
自分の名前を言ってくれた!タックは喜び、そうだ。もうひとついいこと教えてあげると自分が実は人間じゃないんだとミューに告げます。そう、本当は俺は天使なんだ。頭の上にわっか、背中に羽がある天使なんだと歌います。『I'm Angel』
人々に幸せと安らぎを運ぶ天使なんだと歌うタック。この歌も優しくて好き。

タックは天使なんだけれど、今はちょっと休憩中。何かがちょっとおかしくなって、どうしてこの世の中に人が人の苦しみを作り出すのかと思ったら地上に落とされてしまった。いつか奇跡を起こす力を取り戻し天に戻れる日がくるんだけど、それまでは何の力も使えない。今、その力が使えたら、すぐにでも君を自由にしてあげれるのに。だけどもし、その天に戻るための力を使っちゃったらどうなるのかな。天に戻れなくて、人間のまま歳をとって死んじゃうのかな。でもそれでもいいよ。君と話ができるのなら。きっと君と出会うためにここに来たんだ…
ここのタックとミューはとっても微笑ましいです。座り込んだタックのところにミューが来て、タックの肩に頭を持たせかけるところなんて、そのままセットで持って帰りたいくらいふたりとも可愛いです〜。
タックはミューに言います。「早くしゃべれるようになればいいのになぁ。君が今どんな気持ちなのか知りたいよ…。だけど、もししゃべれるようになっても、このことは誰にも言っちゃいけないよ。もししゃべったら俺はここにいられなくなる。
その言葉にミューは大きな衝撃を受ける。母親が死んだときの記憶を甦らせたのだった。おびえたミューは走り去ってしまう。タックは何が起こったのかわからず、呆然とする。

それ以来、ミューは一歩も教会を出ようとしない。タックはひとりひざを抱え、悩み苦しみます。どうして?言葉はなくてもわかりあっていると思っていたのに。試合をしてももうミューは喜ばない。どうしていいかわからない…。
スムース達が顔を見せる。少年達はタックを心配してタックのために何かできないか、調べてみたのだ。ニューヨークに医者がいて、ミューみたいな子供を何人も治していると言う。ミューがいなくなってからのタックは見ていられない。タックがミューにどれだけ尽くしたか少年達はよく知っている。だからタックの気持ちもわからないではないけど、そんなときは何か始めたほうがいいんじゃないのか。と少年達はタックに言う。
だけどタックは、そのためには金がいるっていうんだろう?そして試合をしろと…もう騙されないと心を許さない。そして、何をしたってあんな風に心を閉ざしたミューがもう一度しゃべれるようになるなんて思えない…と悲観的になっている。
少年達は必死で説得をする。もう嘘はつかない。この情報は本当なんだ。あきらめずに思いつづければきっとかなうと、努力することの大切さを教えてくれたのはお前じゃないか。この気持ちだけはホントのホントだと。『ホントのホント』
少年達の真摯な説得に心を動かされ、タックはもう一度やってみる気になる。喜ぶ少年達。ただし、試合は一度だ。これを最後の試合にすると言うタック。それは無理だ。一度でそれだけ稼ぐとなるととんでもない奴とやることになる!と止めようとする少年達だったが、「時間がたてばたつほどミューは遠くへ行ってしまう。」と言うタックの固い決意にうたれ、タックの最後の試合のために全面的に協力することにする。あるものはタックの体力作りのためのお金を稼ぎ、観客が増えるように宣伝し、そして、タックのハードトレーニングが始まる…。

『ハードトレーニング』
この場面はダンスで表現されていますが、すごいです。ビラを配り宣伝する少年達、働く少年達に続き、タックが少年達をひきつれて現れるときには観ているほうも手に汗・・・。一緒にトレーニングしてるような気分になります。一番しんどいのは平沢さんでしょうが、タックと一緒に踊るみなさんもすごいです。しかしハードなダンスに加えて腕立てふせや倒立腕立てまでしてしまう平沢さんて・・・。(この場面の終わり、トレーニングを終えて、スポットの中、呆然と立つタックに大きな拍手が起こります。そりゃ拍手したい気持ちになりますよ・・・。)

そのまま場面は試合当日の控え室。ひとり、顔を伏せ椅子に座っているタック。静寂。スムースが現れて、ためらいがちにタックの背に手をやる。(この場面、とても好き)ああ、と気が付くタック。スムースは笑顔を見せて黙ってタックの手にバンテージを巻き始める。「手が震えてるぞ」とタック。「ちょっと緊張して…」とスムースは答えながらも落ちつかない。スムースは試合の相手がどれだけ強いかよく知っている。タックのことが心配でたまらない。
なのにタックは「ありがとう、いろいろしてくれて」と言う。…どうしてお前はいつだってそんな風に感謝ばかり…スムースはたまらず「やめたいんならそう言え!今からでもやめられる」と言ってしまうが、タックは大丈夫だと言う。そこにスピード、スカンク達。
いままで見たこともないくらいたくさんの観客が入っていると報告する。そうか、それならだいぶ稼げるな、大丈夫だな。「どうしてそこまでやるんだ、ミューのために」と問うスムースに、タックは明るく「話したいからさ。」あの子の澄んだ心の中には生きることの答えがきっとある…そう言うタックに、少年達はよくわからないながらも、一生懸命やることの大切さだけはよくわかった。誰でも一生に一度は光り輝くときがくる。と答えます。
時間が来て「さ、行こうか」というタックにチャムがりんごを差し出す。くれるのか?と答えるタック。大きくうなづくチャム。心のこもった精一杯の励まし。そして少年達は口々に「無理はするな」「だめだと思ったら寝ちまえ」「他にも方法はあるんだから」…みんなとにかくタックに無事でいてほしい。
出て行こうとするとき、タックはスムース、スピード、スカンクを呼びとめます。「ありがとう。ホントにいろいろしてくれて」「礼を言うのは俺達のほうさ…」3人の表情、タックの後姿に万感の思いがにじみます。そんな中、いよいよ最後の試合が始まる。

舞台上手側にロープを張った椅子を並べリングが形作られています。考えてみたら椅子並べているだけなのに、すごく雰囲気出ています。リングの回りには見守る少年達。舞台下手側にはジョーと青年。
全体的に暗めの舞台に赤い照明。戦うタック。試合中は、静寂のなかタックの心臓の鼓動の音とともにタックのモノローグとジョーのナレーションで進行します。実際には舞台上に対戦相手はいませんが、殴られるタックの動きや表情、モノローグによって、まるで相手が見えるような気がします。

試合が始まってすぐ最初のパンチが飛んできた瞬間にタックはスムースの震えの意味を悟ります。スムースがあんなに心配していた…。それは今までうけたことのない速い、重いパンチだった。しかも相手は笑っている…俺を見て笑いやがった。
惑わされるな、そんなものははったりだ。足を使え!スピード達のアドバイスはよくわかっている。だけどもう相手に触れることすらできない、ただ殴られ続けるばかり。いつまでだ、いつまで耐えればいい…俺はこの衝撃にいつまで耐えればいいんだ…。
恐ろしく強い相手とのいつ終わるとも知れない試合。「タックもういい!立つんじゃない!」とタオルを投げようとするスムースに「タオルを投げたら絶交だ」と告げ、打たれても打たれても立ちあがるタック。タックを支えているのは心の力だった。何も変わらなくても全てが無駄に終わっても、俺は俺のできることを精一杯やってやる…。

身体も精神も打ちのめされ、気力だけで戦うタック。しかし終わりのときが近づいてきた。いつまでも倒れないタックに業をにやした相手はすさまじいラッシュをしかけてきた。タックの限界が近づく…そのとき、聞こえてきたのはミューの歌声。ふと見るとリングの外にミューがいる。椅子の上に立って歌っている。
タックは思う。誰かの声が聞こえる…誰かが俺の名を呼んでいる。 あれはミュー…。ミューが何かを叫んでいる。ミュー、何言ってるのかわからないぞ…
「タック、死んじゃいや。生きていて…。」ミューの叫び。

ミュー…俺は明日を信じて誰かと触れ合って生きていたい。何も変わらなくても、どんな苦しみを抱えていても生きていることだけで素晴らしいことなんだ。俺がここに生きている。精一杯生きている。それが命の答えなんだ。
極限状態の中でタックが悟ったそれこそが生きることの答え、命の答え。それを知ったとき、タックは天に帰る許しを得、力を得る。信じられない力が身体に沸き起こってくる。天に帰るときが来た。天からの「全てを立ちきって飛びたて」と言う声。

タックは叫ぶ。…なぜ今なんだ!!俺がいなくなればミューは・・・・その瞬間、相手の渾身のパンチが飛んできた…!
この瞬間、タックは宙に飛び、強い光に幻惑され、一瞬、真っ暗になります。

タックが幻惑からさめると試合は終わっていた。勝ったらしい。
しかし、天に帰るための力を相手を倒すことに使い果たし、変わり果てた老人の姿になってしまったタックは去るときが来た…と悟る。いなくなったタックを懸命に探す少年達。少年達は老人にタックのことを誇りを持って語る。老人は「いつまでも忘れないことだ」と少年達に言う。忘れるもんか、タックは大切な仲間なんだと少年達はまたタックを探しに行く。

ミューは姿が変わってもタックのことがわかるんですね。それは彼女はタックと心で話していたから。そして、スムースもうすうす感じていたのかもしれない。スムースは老人に、タックに会ったら伝えてくれと頼みます。「どんなことがあっても戻って来い」と。
ひとりいつまでも去ろうとしないミューは、老人に「タック…」と呼びかけます。「タック…それがボクサーの名前か…」老人(タック)はつぶやき、顔を隠して去ろうとしますが、ミューはタックに一所懸命、話しかけます「ミュー、話せる…」。言葉を取り戻したミューにタックは万感の思い。だけど去らなければいけない。これからは自分の力で生きていくんだ、一所懸命生きればいつかきっと光り輝くときが来る。タックはミューに語り、ミューは、タックの分も二人分生きると約束し、ミューのハーモニカをタックに渡します。

それ以後タックの姿を見たものは誰もいない。タックはふらりと現れ、少年達の心に何かを残し、ふっと去っていった。
ジョーは語ります。少年達は二度と世をすねたり絶望したりしなかっただろう。このことこそがタックとの友情の証だった。そしてミューは、ミューだけはタックが何者なのか正しく理解していた。しかしそれは語られることはなかった。その代わりミューは才能を開かせ、心優しきボクサーの歌を作った。その歌はジョーのもとにも鳥が運んでくれた。
タックはどうなったか…あのまま死んでしまったかもしれないし、今もどこかで空を見上げているかもしれない。「寂しいじゃないか」という青年に、「そんなことはない」とジョー。
タックは少年達に何かを語ることができ、ミューは言葉を取り戻した。その思い出は消えない。タックにとってはそれで充分だった。人間であれ天使であれ、この世でできることはそう変わるもんじゃない。命の意味が変わらないように。
あのとき飛び立てなくても、あのときの思いを、生きる喜びを忘れなければ、タックはいつか天に帰れる。魂を解き放って…。

時の流れのなかに浮かんでは消えるおとぎ話…最後に話せてよかった…語り終え、ジョーは静かに目を閉じる。青年はいつか僕もおばあちゃんに会えるかな…とつぶやき、ジョーを振り返る。ジョーの反応はない。眠ったの?ジョー?と近寄ってみると、その手からこぼれ落ちたものはハーモニカ。「ミュー」と名を刻んである。タックの初めての試合で得たお金でみんなでミューに贈ったあのハーモニカ?最後の試合のあとミューがタックに渡した………タックなのか?
ジョーの魂が羽ばたく音が聞こえる…。そして空に向って青年の「タックー!!」という叫び。

ラストシーン。ピアノのメロディと共にセットはけると、ブルーの照明の中、顔を伏せて座り込んでいたタックが顔をあげ空を見上げる。そして青年の押すジョーの車椅子にふらりと近づき、触れるか触れないかでするっとかわし前へ出ます。聞こえてくるのはミューの歌う『優しさも愛することも』。青年とジョーはそのまま退場し、ミューが現れます。心優しきボクサーの歌を歌いながら。タックは帽子と遊んでいます。そして歌はタックとミューのデュエットになります。竹内さんの澄んだ歌声と平沢さんの優しい歌声が心打ちます。

ふたりの後ろにはそれぞれガラクタの楽器を持った少年達が現れ、ミューとタックに笑いかけながら去っていきます。このあたり、ひとりひとりの表情を見てると、泣けて泣けてたまんないです。最後にミューが去り、ひとり残ったタックは後ろを向いて空を見上げます。そこには帽子をかぶった天使の後姿が浮かんでいます。そして『YESTERDAY IS…HERE』の幕が降ります。


YESTERDAY IS…HERE


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